研究課題/領域番号 |
16K09094
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 健也 東京大学, 環境安全本部, 助教 (50739133)
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研究分担者 |
大久保 靖司 東京大学, 環境安全本部, 教授 (00301094)
黒田 玲子 東京大学, 環境安全本部, 助教 (50553111)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 教職員の健康管理 / メンタルヘルス / 産業保健管理 |
研究実績の概要 |
教職員のメンタルヘルスおよび介入効果に関する文献調査を実施した。教職員のメンタルヘルスに関する研究はバーンアウト症候群を対象とした横断研究が1990年代初頭において多く実施され、その一部について縦断研究が実施されている一方、その後普及したDemand-Control-Support modelやEffort-Reward Imbalance model等によるストレス反応指標を用いた要因分析が近年進んでおり、労働時間等の量的指標と合わせて、学校環境における人間関係や教室運営といった質的要因との関連が示唆されている。教職員のヘルスリテラシーにかかる現状やその健康状態に対する影響に関する文献は見られなかった。 全国の教育委員会(村部を除く。以下、教委)のうち、全ての都道府県および政令市(以下、県等)、市町では段階的無作為法で抽出した360教委に対し、学校教職員の健康管理体制およびメンタルヘルス対策に関する自記式調査票を郵送法により実施した。教職員の健康管理は4割で学校医が担当しており、県等では嘱託産業医が6-7割、専属産業医が1割強関わっていた。健診結果等に基づく保健指導実施率は県等8割強、市町4割弱であり、医師の意見聴取実施率はそれぞれその半数程度であった。教職員の健康管理を専門的に行う組織の設置率は県等4-5割、市町では殆どなかった。メンタルヘルス対策は殆どの項目で大企業と同等の実施率であり、「労働者・管理監督者への情報提供」が高い一方で「担当者の専任」が相対的に低い傾向であった。政令市で集団研修の機会が多い一方、都道府県ではリーフレット配布が高い傾向であった。教職員の健康管理は任命権者が都道府県であることから都道府県の管掌と考えられる一方で、医師からの意見聴取等の産業保健業務が十分にされていない事や、健康管理の実施主体が県等と市町村との間で明確ではない可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自記調査票の回収率が4月30日時点で都道府県63.8%、政令都市30.0%、市町27.8%であることから、回収率の改善の為の督促が必要である。 また、介入研究に必要なパイロット調査が平成28年度内で実施できなかった。この理由としては、教職員の介入研究に関する文献が少ないため、教職員以外の集団に対するメンタルヘルス対策の介入効果に関する研究の収集・分析に時間がかかっていること、および学校事業場の特性(分散事業場である事、組織のヒエラルキーが一般企業と異なること等)を考慮した介入方法に関する知見(ICTの利用を含む)の収集・分析が十分に進んでいないことが挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
教職員のストレスマネジメント対策としての介入方法の構築に際して、引き続き知見の整理を行うとともに、必要に応じてヒアリングやグループインタビューの実施等による質的研究により手法の整理を行い、介入方法を構築する。また、それに基づき平成29年度におけるパイロット調査および本調査の実施を予定している。 なお、教職員のメンタルヘルス不調に関する要因分析について、近年の知見ではその調査対象者に休職者は含まれていないことが多く、healthy worker effectの可能性を否定できないことから、休職者を対象とした調査の実施について検討中である。 教育委員会における産業保健体制の調査研究については、引き続き自記式調査票の返信を促すとともに、ヒアリング等による良好事例の収集などを当初の予定通り実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
文献調査に基づく介入方法の構築に遅れが生じ、本年度のパイロット調査の実施ができなかったため。また、自記式調査に基づく良好事例の収集ができなかっため。
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次年度使用額の使用計画 |
質的研究等による知見の補強のための調査費用、良好事例収集の調査費用、および介入方法の構築・パイロット調査にかかる費用として使用する予定。
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