研究実績の概要 |
2019年1月に教職員の時間外労働に係るガイドラインが策定されたことを踏まえ、村部を除いた全国1,456教育委員会(以下、教委)のうち、全都道府県・政令市、および段階的無作為法により抽出360市町教委を対象に、長時間労働の産業保健管理の実態調査を実施した。その結果、長時間労働者対策の実施率は全般的に低い傾向にあること、面接指導抽出者は全教職員の約10%(そのうち時間外労働時間が100時間/月を超えた者は各自治体が所管する教職員の2.0-12.0%)であること、面接指導の対象者はその半数以下、実際に面接指導を実施したのは全教職員の0.5%以下であった。面接指導実施率が低い背景には、教職員の多忙化とともに、面接場所の設定方法や、各自治体の産業保健管理体制に係る課題があると考えられた。 教職員のストレスコーピング向上を目的に開発した学校職場への出張教育およびホームページでの情報提供による介入プログラムの結果、半年後のフォロー調査では、職場出張教育群(介入群1)においてEffort-Reward imbalance Questionnaireのリスクスコア及びその下位尺度であるEFFORT要因、及びPSQIスコアの有意な改善が認められた。また、REWARD要因、オーバーコミットメントスコア及びCCHLスコアの改善傾向が認められた。ホームページで情報提供を実施した群(介入群1及び2)ではEFFORT要因とPSQIスコアの有意な改善が認められた。1年後の調査では、ホームページでの情報提供を実施した群(介入群1及び2)でREWARD要因とCCHLの改善が認められた。このことより、多忙な学校教職員に対しての現場介入およびICTを用いた啓発は、少ない介入負担で教職員の仕事への過度な働き方や睡眠状態を改善し、また教職員のストレッサーの背景にあるヘルスリテラシーの改善に寄与する可能性が示唆された。
|