研究課題/領域番号 |
16K09266
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研究機関 | 東京有明医療大学 |
研究代表者 |
高倉 伸有 東京有明医療大学, 保健医療学部, 教授 (60563400)
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研究分担者 |
矢嶌 裕義 東京有明医療大学, 保健医療学部, 准教授 (00563412)
高山 美歩 東京有明医療大学, 保健医療学部, 講師 (20563414)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 鍼 / プラセボ / ダブルブラインド / 肩こり / 補完代替医療 |
研究実績の概要 |
鍼の治療効果の科学的根拠は、患者のみをマスクしたシングルブラインド下での臨床研究によって示され、欧米の医学雑誌で多く取り上げられ信頼性の高いものとされている。鍼の研究においては術者(はり師)と患者の両者をマスクしたダブルブラインド法による臨床試験は、その実施が不可能と考えられていた。そこで私たちは、世界で初めて、鍼師と患者をマスクすることができるダブル(術者-患者)ブラインド用の鍼を考案し、これを用いて鍼の適応症として最もよく知られる肩こり(基礎疾患なし)に対する鍼の効果を調べた。その結果、鍼尖が皮下組織に到達する浅刺用(5mm)の刺入鍼を用いた治療では、鍼の特異的効果は見出せなかった。 本研究では、鍼尖が骨格筋に到達するダブルブラインド用の10mm刺入鍼を用いたランダム化プラセボ対照比較試験を実施して、骨格筋への鍼刺入による肩こりに対する特異的効果を検証するとともに、先行研究にならい鍼治療前後の肩部の筋血流の変化を観察し、骨格筋への鍼刺激による肩こり軽減の生理学的メカニズムを検討することとした。これらにより、鍼による皮膚刺激で見られなかった、肩こりに対する特異的効果が骨格筋への鍼刺激で得られるのか、あるいは鍼の刺入深度にかかわらずプラセボ効果に過ぎないのかを検討している。 平成31年度(令和元年度)は、本研究のプロトコル論文の作成にあたると同時に、被験者を募集し臨床研究を行い、鍼治療後の肩部の改善と筋血流の変化を観察した。またイリノイ大学の研究者とのダブルブラインド鍼を用いた臨床試験におけるブラインド方法に関するプロトコル論文、ダブルブラインド鍼を用いたアキレス腱、膝蓋腱の血流改善に関する東大との共同研究で得られた結果を海外専門誌に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度まで、本研究の基礎となるダブルブラインド用偽鍼の鍼尖の長さと鍼感覚・ブラインド効果についての検討、また鍼の製作のための準備に時間を要し実験が遅れていたが、平成31年度(令和元年度)までに血流実験の数名分の未終了のトライアル以外はすべて終了し、肩こりの改善度など終了分の結果についての解析に入った。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、研究プロトコルの論文を海外の医学専門雑誌に投稿するとともに、終了した研究データの入力および解析を随時行い、論文の作成を進めていく。筋血流の研究については約8割の被験者の測定が終了したが、コロナウイルス感染症の影響で、残りの研究が中断し、令和元年度内に終了しなかった。実験の再開が可能になり次第、残りの研究を終了させ解析に入る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度は、臨床研究に係る被験者や施術者、アシスタントへの謝礼金を主としたが、コロナウイルス感染症による影響もあり、筋血流の研究実施やデータ解析に対する人件費や謝礼金を十分に支払うに至らなかった。 令和2年度は、残りの被験者・施術者への謝礼金のほか、研究補助者および研究データ入力協力者への人件費、各論文の英文校正費用、オープンジャーナルへの掲載料、学会参加費や共同研究者とのディスカッション等の経費として使用する予定である。
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