研究課題
私たちは、世界で初めて、鍼師と患者をマスクすることができるダブル(術者-患者)ブラインド用の鍼を考案し、これらを用いて鍼治療の効果を科学的に証明するための臨床研究を行ってきた。本研究では、鍼の適応症として最もよく知られる肩こり(基礎疾患なし)を有する160名の患者を対象とし、鍼先が骨格筋に到達するダブルブラインド用10mm刺入鍼と3種のプラセボ鍼を用いたランダム化プラセボ対照比較試験(RCT)を実施した。令和2年度はRCTの解析を進めながら、肩こり患者10名で血流が減少すると言われる僧帽筋・肩甲挙筋の筋血流の変化を調べ、更には、肩こり患者10名で頸部動作時の頸部屈筋群と伸筋群の筋活動を調べ、鍼の肩こりに対する治療効果の機序についても検討した。この間、患者を対象とした研究についてはコロナウイルス感染症の影響で一部の研究が中断したが、感染症対策を十分に施しながら研究および解析を終えた。その結果、鍼治療は主観的な肩こりを改善するが、骨格筋への鍼刺入による特異的効果は認められず、また血流や筋活動などの客観的指標に基づく変化も見られなかったことから、鍼治療による肩こり改善の生理学的メカニズムの解明に至らず、肩こりに対するいわゆる鍼の治療効果はプラセボ効果を大いに含む可能性が示された。また令和2年度には、ダブルブラインド鍼のブラインド効果に関する論文、イリノイ大学の研究者とのダブルブラインド鍼を用いた臨床試験におけるブラインド方法に関する論文のほか、今回の鍼による筋血流への影響について相互に検討が可能な、アキレス腱・膝蓋腱の血流改善に関する東大との共同研究で得られた論文等が海外専門誌に掲載された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件)
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