研究課題
本研究課題では炎症時における血管内皮細胞の物性変化を解析し、細胞の物性が持つ病態生理学的役割を明らかにすることを目的とする。これまで、我々は炎症時、およびギャップ結合阻害時に血管内皮細胞が硬化することを見出し、細胞硬化が細胞接着斑の形成や細胞骨格の編成に伴って生じることを明らかにしてきた。最終年度では、ギャップ結合構成蛋白質コネキシン(Cx)特異的抗体を用いて各Cx分子が細胞の硬さに及ぼす影響を解析した。さらに細胞の硬さが白血球の接着に及ぼす影響を解析した。前年度までに非特異的な阻害剤を用いて血管内皮細胞が硬化することを明らかにしており、より詳細に検討した。血管内皮細胞には主にCx43, Cx32が発現しており、各分子に特異的な阻害抗体を細胞に作用して細胞の硬さを測定した。その結果、両抗体とも細胞の硬化を誘導し、各Cx分子に共通の機構で細胞の硬化が誘導される可能性が示された。次に細胞硬化がどのような役割を有しているか、白血球の接着に着目して解析した。一般的に白血球は軟らかい基質よりも硬い基質への接着が優位である。そのため、血管内皮細胞が示しうる範囲の硬さも白血球の接着に及ぼすと仮定してその検証を行った。ギャップ結合阻害剤、細胞骨格編成阻害剤を処理して細胞の硬さを調節した細胞に単球系細胞であるTHP-1細胞の接着を比較した。その結果、細胞の硬さ依存的に単球の接着が観察された。また、細胞と同等の硬さを有した人工基質へのTHP-1細胞の接着を評価し、同様の結果が得られることを確認した。以上の結果から、我々はギャップ結合によって血管内皮細胞の硬さが制御され、細胞硬化時には白血球の接着が亢進することを明らかにした。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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