腎線維化の進展において尿細管上皮細胞は重要な役割を果たしている。その主体となる分泌因子については全く不明である。TFF3(トレフォイルファクター3)は約7kDaの小ペプチドで、粘膜修復因子として、消化管のみならず、腎臓を含む全身臓器に分布している。過去の報告では、慢性腎臓病において血清および尿中TFF3が増加しており、急性腎不全のラット実験モデルでは尿中TFF3が減少していた。TFF3と腎組織障害度との関連を明らかにする報告はないため、今回、血清および尿中TFF3と尿細管間質障害との関係を検討した。腎生検を行った患者112人(間質性腎炎:34人、IgA腎症:57人、Minor Abnormalities もしくは菲薄基底膜病:21人)を対象とし、血清および尿中TFF3は独自に確立したELISA法を用いて測定した。腎生検組織における炎症細胞浸潤と線維化は、半定量的にスコア化を行った。血清および尿中TFF3の中央値はともに間質性腎炎群において他群より有意に上昇していた(p<0.0005)。間質性腎炎群で、尿中TFF3は特に炎症細胞浸潤スコアと正の相関が認められた。間質性腎炎群において、血清および尿中TFF3はいずれも線維化スコアと正の相関がみられた。腎組織TFF3蛋白は、免疫染色で尿細管上皮細胞に観察された。間質性腎炎群において、血清および尿中TFF3はともに有意に上昇しており、とくに血清と尿中TFF3の上昇は、腎機能低下や線維化を反映する可能性が示唆された。慢性腎臓病(CKD)216名の検討では、尿中TFF3濃度はCKDステージの進行を有意に予測し、腎機能予後予測の有用なバイオマーカーであることが示唆された。さらに、IgA腎症において腎組織TFF3のmRNA発現と腎線維化の程度が有意に相関することを明らかにした。
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