研究課題/領域番号 |
16K09626
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
岡田 浩一 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (60233342)
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研究分担者 |
井上 勉 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30406475)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 急性腎障害 / 慢性腎臓病 / 腎線維化 / アポトーシス / カスパーゼ / CCN2 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
本研究ではAKIイベントの重積によるCKDの階段状重症化の病態を明らかにすべく、虚血再灌流障害(IRI)モデルを用いてその腎線維化メカニズムを検討するため、以下の実験を行った。 1)IRIモデル線維化に関与することを確認したCCN2に着目して、CCN2fx/-、p35とgGT.Creマウスの交配により、gGT.Cre;p35(p35により尿細管上皮細胞特異的にカスパーゼ活性が抑制)、gGT.Cre;CCN2fx/-(尿細管上皮細胞特異的にCCN2発現が抑制)およびgGT.Cre;p35; CCN2fx/-(尿細管上皮細胞特異的にカスパーゼ活性とCCN2発現が抑制)を作出し、IRIモデルを作成して検討した。p35の発現誘導により急性期(3日目)の尿細管障害は軽減されたが、慢性期(2週目)の線維化はコントロールと同等に進展した。またCCN2の発現抑制により慢性期の線維化のみ有意に軽減された。p35の発現誘導とCCN2の発現抑制を二重に惹起すると急性期障害は軽減したが、慢性期線維化は増悪傾向を認めた。AKIにおける障害尿細管細胞のアポロ―シスを回避させるとCCN2抑制による線維化軽減効果が減弱することが明らかとなった。(論文投稿中) 2)細胞周期レポーターマウスを用いて、IRI後の腎線維化に関与するとされるG2/M期に留まる障害尿細管上皮細胞を単離し、その病的形質変化(特に線維化促進因子発現)を網羅的に検索するため、まずFucci2aRマウスとgGT.Creマウス間の交配により、尿細管上皮細胞が細胞周期に対応して異なる蛍光を発するgGT.Cre;Fucci2aRTg/+マウス(G1/S期:mCherryによる赤色蛍光、S/G2/M期:mVenusによる緑色蛍光)を作出し、IRIモデルを作成したところ、両蛍光による細胞周期の異なる上皮細胞を検出することが可能であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度中にgGT.Cre;Fucci2aRTg/+マウスの障害尿細管より上皮細胞を単離し、FACSにて各細胞周期に留まる細胞より遺伝子を抽出し、網羅的な解析を行う予定であった。しかし既報にある尿細管上皮細胞の単離方法がうまく再現できなかったため、現在、複数の方法を試みている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
実験1)は終了し、現在、論文投稿中である。追加実験を要求された場合には、適切に対応する。 実験2)については、尿細管上皮細胞の単離方法を確立したのち、gGT.Cre;Fucci2aRTg/+マウスを用いたIRIモデル腎組織より上皮細胞を単離し、FACSにより緑色蛍光細胞(488nmレーザー、525/50nmバンドパスフィルターで検出)を分離・回収し、mRNAを抽出して遺伝子発現アレイを用いて網羅的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
尿細管から上皮細胞を単離するプロトコールが再現できておらず、FACS解析に進めなかった。繰り越し助成金と次年度の助成金を併せて、単離細胞のFACSによる分離と回収された細胞から抽出したmRNAの網羅的解析を行う予定である。
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