研究課題
MDSC(myeloid-derived suppressor cell)は単球と好中球の表現型を持つ免疫抑制性の細胞集団である。申請者はMDSCがSKG関節炎マウスにおいて関節炎を抑制することを見出した。MDSCが実際に炎症局所で抑制機能を有しているかを明らかにする過程で以下の結果を得た。a.SKGマウスでは関節炎以外にもリウマチ肺様の肺病変を呈す。これを確認した。肺病変におけるMDSCは、肺病変の進展に伴って増加することを明らかにした。肺MDSCをソーティングで単離し、CD4T細胞と共培養した結果、MDSCは確かにT細胞抑制活性を有すことを明らかにした。このことから、肺に遊走してきたMDSCは炎症を抑えることが明らかになった。b.研究の過程で、SKGマウス肺病変にはMDSCとは別のGr1+CD11bdimの樹状細胞様集団が現れることが明らかになった。この細胞はCD11cを表出し、単離してT細胞と共培養すると抑制活性を持つことから、制御性樹状細胞様細胞と名付けた。全肺細胞をGM-CSF存在下で培養するとこの細胞が誘導できることが明らかになった。少なくとも一部はMDSCから分化してくること、肺細胞が出すTGFbが関与していることが明らかになった。c.制御性樹状細胞様細胞を単離してSKGマウスに養子移入すると、肺病変の進展が抑制された。以上の結果は、MDSCは炎症局所において抑制的に働いていることを示している。さらには、制御性樹状細胞に分化して免疫抑制に働くことも明らかとなった。今後の検討課題は、これらの細胞がヒト関節炎や肺炎においてどのような役割を果たしているかを解明することである。
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