研究課題
(平成28年度) SLEにおけるIFNsと、細胞内代謝システム異常、リンパ球分化異常、その病態との関連性、(平成29年度) IFNsが細胞内代謝システム変化を介しリンパ球分化へ与える影響、分子生物学的メカニズム解明、(平成30年度) 細胞内代謝異常がリンパ球分化偏向を齎すエピゲノム制御機構の解明、これらをもとにした臨床応用への基盤となる研究を行うことを目的としている。平成29年度は、具体的には、 IFNsが解糖系や酸化的リン酸化などの細胞内代謝システム変化を介しB細胞やCD4陽性T細胞球分化へ与える影響、mTORC1やAMPKなど代謝に重要な分子を介した分子生物学的メカニズム解明を確認することを計画していた。上記について検討したところ、以下の研究結果が得られた。(1)B細胞においては、CpG(TLR9リガンド)刺激はヒトIgM memory、class-switched memory B細胞において、IL-6, IL-10産生とともに、plasmablast分化を誘導した。CpGによるB細胞活性化に伴い、mTORC1リン酸化の亢進、乳酸産生の増加、つまり解糖系亢進がみられ、IFN-αは同経路を増幅し、plasmablastをさらに強力に誘導した。MetforminによるAMPKシグナルの増強は、mTORC1リン酸化、乳酸産生を抑制し、その結果plasmablast分化を阻害したが、一方でIgM memoryからのIgD-CD27- memory B細胞の分化を誘導した。(2)CD4陽性T細胞においては、mTORC1阻害剤であるrapamycin、解糖系阻害剤による2DGによりヒトメモリーCD4陽性T細胞において制御性T細胞の誘導が確認された。しかしrapamycinにおいてはIFNgを産生するT-bet+FoxP3+CD4+T細胞が誘導され、Th1の抑制がみられないのに、2DGにおいては、IFNgを産生しないT-bet+FoxP3+CD4+T細胞が誘導され、Th1の抑制がみられた。平成30年度はリンパ球分化偏向を齎すエピゲノム制御機構を検討をする。
2: おおむね順調に進展している
H29年度の実施計画として、「IFNsが細胞内代謝システム変化を介しリンパ球分化へ与える影響、分子生物学的メカニズム解明」としていたが、上記のごとくB細胞、T細胞ともにmTORC1やAMPKなどの重要分子、解糖系の制御による分化制御機構が明らかとなり、順調に進展したと評価している。
今後in vitro解析により、リンパ球分化に伴うエピゲノム制御機構を解明したいと考えている。
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The Journal of immunology
巻: 199 ページ: 425-434
10.4049/jimmunol.1601908. Epub 2017 Jun 16.