研究課題/領域番号 |
16K10022
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小林 法元 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (00362129)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | MDA5 / 間質性肺障害 / TIF-1γ |
研究実績の概要 |
本年は、機能解析のための融合蛋白の合成を行った。筋炎特異抗体の抗原については、本研究の主たる対象であるmelanoma differention-associated gene 5(MDA5/ IFIH1)、および、若年性皮膚筋炎(JDM)で検出される頻度が高く、間質性肺障害(ILD)の合併も報告されているNXP-2/MORC3、頻度は低いが慢性に進行するILDを合併するJo-1/HARS、ILDは合併しにくいが検出される頻度が高いTIF-1γ/TRIM33と、MDA5と同じRIG-Iスーパーファミリーに属するRIG-1/DDX58についてプライマーを設計し、刺激したヒト末梢血細胞からそれぞれのRNAの抽出を開始した。Jo-1以外はアミノ酸が3Kbp程度と大きく、機能に関連する構造を選別している。遺伝子研究の倫理審査を提出しており、許可が得られ次第、蛋白合成を行いたい。 患者血清の実験への利用に際し、異なる筋炎特異抗体の有無を確認するため、保存されている患者血清での抗TIF-γ抗体をELISAで測定した。急速進行性ILD合併例では5例中0例、慢性または軽快したILD合併例では19例中0例、ILD非合併例では20例中5例が陽性であった。他に、慢性ILDとILD非合併例で検出感度以下であるが明らかに他の症例と比較し陽性である例が1例ずつ認められた。一方、抗MDA5抗体は急速進行性間質性ILDで全例に強陽性であり、慢性ILD合併例で約2/3において陽性であるが、ILD非合併例では検出されなかった。抗MDA5抗体と抗TIF1-γ抗体が両方とも検出された例は無かった。以上より、TIF-γ抗体陽性例は日本のJDMにおいてILDを合併しにくいことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度の計画では、リコンビナントMDA5を作成して、刺激実験を行う予定であったが、MDA5は分子量が大きく、正確な配列のmRNAの抽出を行っている段階である。平成29年度に刺激実験を行う計画である。 刺激実験に使用する患者血清については、他の筋炎特異抗原の影響の有無を確認する必要があると判断し、TIF-1γ抗体の測定を行った。抗MI-2抗体についても市販されているELISAキットで測定を行っており、評価中である。 患者肺病理組織を用いた研究については、MDA5の作用について刺激実験の結果を確認後、病態におけるMDA5の役割について評価が可能な最適な方法により検討する方針とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、まず、融合蛋白の合成を完了する。GFPまたはHIS tag配列を持つベクターに目的遺伝子を挿入し、大腸菌に移入する。正しい配列のベクターをもつ大腸菌クローンを選択し、500mLの培養液で増殖させてからベクターを取り出す。そのベクターをHEK293TやA549などのヒト由来細胞株に移入し、発現した目的タンパク質をtagを用いて精製する。 その後、精製した融合蛋白質を用いて、ヒト末梢血単核球、Tリンパ球、単球、気道上皮細胞株などを刺激する。上清中のサイトカインをCytometric Bead Arrayまたは、ELISA法により測定する。ILDでの上昇が報告されている、インターロイキン-18やIP-10、BAFF、APRILなどを中心に、探索する。また、MDA5のリガンドであるpoly(I:C)や患者血清および市販されているポリクローナルMDA5抗体による共刺激を行い、抗体の作用を確認する。その後、マルチプレックスmRNA発現測定によりMDA5固有のシグナル伝達を解析したい。 平成30年度は、RNAiを用いてMDA5の細胞内シグナル伝達の解析を行う。解明されたMDA5の細胞内シグナルに関係する分子についてsiRNAを作成する。これらのsiRNAを細胞に移入することにより対象となる分子をノックダウンし、シグナル伝達の阻害により、MDA5によるサイトカイン産生が抑制されるかを確認する。また、MDA5およびそのシグナル伝達分子について、ILDと関連した遺伝子多型について解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は、リコンビナントMDA5などの融合蛋白を作成し、刺激実験を行う予定であった。しかし、癒合タンパクの合成について時間がかかっている。したがって、融合蛋白による末梢血細胞や気道上皮細胞への影響を解析するための刺激実験の費用が次年度への繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に、平成28年度に行う予定であった融合蛋白による刺激実験を行う。また、平成29年度に行う予定であった細胞内シグナルの解析についても完了する予定であるため、平成29年度は、次年度使用額と予定されていた平成29年度の研究費を合わせて使用する。
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