研究課題/領域番号 |
16K10160
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
藤山 幹子 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (60263935)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | IkappaB zeta / IL-17 / 乾癬 |
研究実績の概要 |
本年度は、IκB family の1つである核内蛋白のIκBζが、ヒト表皮角化細胞におけるIL-17による遺伝子発現の制御において必須の因子であることを明らかとするために検討を行った。 まず、正常皮膚より分離培養した表皮角化細胞に、各種サイトカインを添加し、time-courseでIκBζのmRNAの発現を検討した。IκBζは、IL-17刺激で特異的に発現が誘導され、mRNAのstabilityによるものではないことを確認した。 次に、培養表皮角化細胞にアデノウイルスベクターによりIκBζを強発現させ、発現が誘導される遺伝子を検討した。乾癬病変部に発現が増強している抗菌ペプチド、サイトカイン、ケモカインの発現がIκBζの強発現で誘導されることを確認した。また、IκBζと結合して遺伝子発現を制御することが報告されているp50を、IκBζの強発現系でsiRNAを用いてノックダウンし関与を検討したところ、p50の関与する群と関与しない群があることが明らかとなった。 続いて、siRNAを用いてIκBζを表皮角化細胞でノックダウンした。恒常状態での遺伝子発現に与える影響は限局的であったが、IL-17を添加したとき、表皮角化細胞に発現が誘導される主要な遺伝子の多くで、その発現が抑制された。以上の結果は、IL-17により誘導される遺伝子発現にIκBζが必須であることを示しており、さらには乾癬の病態における重要性を示唆するものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の計画はほぼ達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
IκBζが乾癬の遺伝子発現、IL-17による遺伝子発現において必須の因子であるという報告が海外からあった(Johansen C, et al. Proc Natl Acad Sci USA, 2015)。そこで、本研究の目的を「IκBζが、ヒト表皮角化細胞におけるIL-17による遺伝子発現の制御において必須の因子であることを明らかとする」からさらに発展させ、今後は以下の点を検討する。 我々は最近、Th17サイトカインの1つであるIL-22がSTAT3を介して表皮角化細胞にBcl-3の発現を誘導し、Bcl-3がp50と結合することでIL-22刺激による後期の遺伝子発現を制御していることを明らかにしている。IL-22はIL-17と協調して乾癬に高発現する遺伝子群の発現を増強させ、ここにもBcl-3が関与していることを確認しているが、同時にIκBζも関与していることが示唆される。同じ核内IκBファミリーに属するBcl-3とIκBζがどのように相互に作用しているのかを明らかにする。 また、IL-17により発現が抑制されることの知られているCTACK(CCL27)、は、IκBζのノックダウンで発現が亢進する。CTACKはアトピー性皮膚炎の病態に関与するケモカインであることから、Th2サイトカイン、ケモカインとIκBζに注目して検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の実験計画は順調に遂行できたが、「今後の研究の推進方策」に記載したように、海外から先に論文報告がなされたため、既報告の実験をなぞるのみとなる実験を省略し、今後の推進方策を検討していたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画からさらに発展させ、以下の検討を行う。我々は最近、Th17サイトカインの1つであるIL-22がSTAT3を介して表皮角化細胞にBcl-3の発現を誘導し、Bcl-3がp50と結合することでIL-22刺激による後期の遺伝子発現を制御していることを明らかにしている。IL-22はIL-17と協調して乾癬に高発現する遺伝子群の発現を増強させ、ここにもBcl-3が関与していることを確認しているが、同時にIκBζも関与していることが示唆される。同じ核内IκBファミリーに属するBcl-3とIκBζがどのように相互に作用しているのかを明らかにする。
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