研究課題
本研究では、初年度より、IκB family の1つである核内蛋白のIκBζがヒト表皮角化細胞におけるIL-17による遺伝子発現の制御において必須の因子であることを検討していたが、海外から同様の内容で複数の論文報告がなされた。そこで研究の軌道を修正し、(1)IκBζと同じ核内IκBファミリー蛋白であるBcl-3との相互作用の有無、(2)IL-17刺激による遺伝子発現においてIκBζ以外の重要な分子、の2点につき検討を進めることとした。アトピー性皮膚炎では乾癬類似の病理組織所見をとることがあることが知られているが、表皮におけるBcl-3とIκBζの発現パターンを検討したところ、乾癬とほぼ同様であることが明らかになった。以上の結果は、乾癬型組織の形成に、Bcl-3とIκBζの発現が重要であることが示唆された。一方で、Bcl-3の活性化を制御することが知られているCYLDの発現は、乾癬では減弱していた。この三者の相互作用が乾癬とアトピー性皮膚炎の病態をわけている可能性があると考え、本年度は、培養表皮角化細胞において、それぞれの強発現・ノックダウンを行うことで、遺伝子発現における相互作用、またそれぞれの分子の結合の有無を検討した。さらに、IL-17で発現が誘導され、乾癬の病態形成に重要であるCCL20の発現とIκBζの 関係に注目して検討を行った。IL-17によるCCL20の発現は、IκBζのsiRNAにより完全に抑制されるが、一方でERK経路の阻害によっても抑制され、ERKの抑制はIκBζの発現に関与しない。そこで、IL-17レセプターからERK経路の活性化に至る経路を検討し、src familyが関与していることを明らかとした。
すべて 2018
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Eur J Immunol
巻: 48 ページ: 168-179
10.1002/eji.201747017