研究課題
本研究では、統合失調症などの諸精神神経疾患患者脳で、病態初期にミクログリアなどの脳内免疫細胞の毒性転化が生起する分子・神経病理を解明することを目的としている。研究代表者らは、これまでにPETにより統合失調症患者で発症初段階に脳内ミクログリアが活性化することを観察した。そこで、ここでは、ミクログリアの活性化を惹起する病態プロテアーゼの賦活と、それによる代謝産物の産生をin vivoでMRIなどの医療機器により非侵襲的に画像化し、定量評価するための分子イメージング技術の創成を目指し、初めに、NMRで当該プロテアーゼの活性化を検出・評価することができるスイッチングプローブを設計、合成した。そして、生細胞培養系で病態プロテアーゼの賦活に伴いNMR/MRIシグナルを発生するNMR/MRIプローブを作出した。即ち、病態プロテアーゼによりプロセシングされ、常磁性体がNMR/MRI核種から遊離する結果、T2緩和時間が短縮するスイッチングプローブを創製し、そのNMR/MRIシグナルをNMRで探知、画像化した。当該プローブは、病態プロテアーゼの基質が未同定であっても、その活性を定量的に評価するのに有用である。本研究では、Poly I:Cによる統合失調症病態モデルマウスから調製した脳細胞初代培養系にIn-cell NMRを適用し、ミクログリアの毒性転化に伴う病態プロテアーゼの活性化を、NMRで画像化し定量評価し得ることを確認するとともに、そのMRIによる諸精神神経疾患早期診断への応用への見通しを付けた。
2: おおむね順調に進展している
これまでに脳内免疫細胞の毒性転化に伴う病態プロテアーゼの活性化と代謝産物の産生をIn-cell NMRにより定量的に評価することができる生細胞培養系を創出することができ、残りの研究期間において、それを精神神経疾患病態モデル動物に適用するための基盤技術の構築が可能であるから。
これまでに創製した病態プロテアーゼの活性を、生培養細胞系で定量的に評価するためのNMRプローブを修飾、改編することにより、プローブに血液脳関門透過性を持たせ、その統合失調症等の精神神経疾患病態モデル動物への適用を図る。ここでは、in vitro血液脳関門モデルを用いて、プローブの血液脳関門透過性を検証し、その脳への薬剤到達のための至適化を行う。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
J Neuroinflammation
巻: 14 ページ: 69-77
10.1186/s12974-017-0851-4