(1) ミクログリアの病的活性化の分子病理に関する研究 ここでは、初めに、統合失調症の病態モデルであるpoly I:C 母体投与モデルマウスで、ニューロン・ミクログリア相関に与るミクログリア受容体等の遺伝子発現、細胞内情報伝達系の活性化等を網羅的に検討した結果、統合失調症病態下でミクログリアの性状転化が生じ、神経細胞毒性に与るTNFα、IL1β、IL6等の産生の増加と神経保護に働くIGF1、BDNF等の産生の低減を来していることを見出し、その性状転化にCX3CR1、CD200R等のミクログリア細胞膜上の受容体が機能していることを確認した。また、CD200Rを活性化する低分子化合物を、医薬候補低分子化合物ライブラリーよりスクリーニングし、その賦活がミクログリアの活性化を阻害するとともに、統合失調症様精神症状を緩和することを見出した。 (2) ニューロン・ミクログリア相関を治療標的とする統合失調症予防創薬に掛かる研究 一方で本研究では、fractalkine(FKN)のプロセシングによる可溶性FKNの産生が、ITAM-Syk系を刺激しミクログリアの病的賦活を誘引することを生化学的解析により見出した。また、可溶性FKNの産生をMRIにより画像化することをねらい可溶性FKNの産生を蛍光画像法で可視化する機能プローブを創製した。次いで、当該プローブを改変しparamagnetic effectによりMRI信号を生起するMRI機能プローブを創製し、それをpoly I:Cによる統合失調症病態モデルマウス8週齢から調製した脳切片培養系に適用することでNMR信号を検出した。そして、創製済のプローブに狂犬病ウィルス由来の糖タンパク質を結合し、血液脳関門透過性を持たせることにより、統合失調症発症初段階における脳内ミクログリア活性化をMRIで画像化することに成功した。
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