研究成果の概要 |
てんかんのある185人の患者に検査を施行した。患者は①QOL②心理・精神状態③表現④理解⑤正当な評価⑥過大な評価⑦発作による制約⑧薬による制約の項目についての質問指標に回答いただいた。そのスコアと臨床的データ(頻度、罹病期間、抗てんかん薬数)および心理検査(BDI-II、AQ、CAARS、WAIS-III)の相関を調べた。BDI-II, AQ, CAARSの点数は上記の自覚的なQOLスコアの多くと相関を示した。しかしながらWAIS-IIIの各項目とははっきりとした相関を示さなかった。CAARSではB項目(多動)よりもA(不注意), C(衝動性), D(自己評価)との間に強い相関を示した。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
てんかん患者の主観的または社会適応上の問題が標準的な高次脳検査では十分に評価できないことが臨床的にしばしば遭遇する。本研究の目的は心理検査・精神医学的検査を多面的に組み合わせた心理バッテリーからてんかん患者の実生活上困難となる社会認知的問題を定性的・定量的に具体性をもって測定する方法を開発することにあった。てんかん患者ではAQ,BDI-II,CAARSといった精神・行動の評価スケールの得点が発作状態以上に主観的な自己評価と幅広く相関し、これらの評価を行うことで今まで十分に評価されて来なかったてんかん患者の生活の質を低下させる要因に光を当てることには意義があると考えられた。
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