研究課題/領域番号 |
16K10296
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
橋本 順 東海大学, 医学部, 教授 (20228414)
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研究分担者 |
高原 太郎 東海大学, 工学部, 教授 (50308467)
風間 俊基 東海大学, 医学部, 講師 (70375781)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | MRI / 拡散強調像 / 脂肪抑制 / 乳がん / 前立腺がん |
研究実績の概要 |
近年悪性腫瘍のさまざまなバイオマーカーが発見され、オーダーメイド医療に活用されるようになってきた。バイオマーカーの測定には生検などが行われるが、原発巣と転移でマーカーの発現が異なることが少なくない、などの理由で画像診断への期待が高まっている。画像所見とバイオマーカーとの関係も解明されつつあるが、解析方法は平均値など単純なものであり、得られた情報の一部しか使われていないと感じる。 ところで、悪性腫瘍は不均一であり、とくに病巣周辺部と中心部ではかなり異なる環境にあることはよく知られている。たとえば壊死は腫瘍の中心部分で起こりやすく、悪性度の高いがんは中心部に壊死を伴うことが多いことが知られている。MRI拡散協調像から得られるADCという値は細胞密度と逆相関にあることが報告されている。そこで、腫瘍の辺縁部分と中心部分を自動的にわけてADCを測定するソフトウェアを開発すれば、ADC値の分布から壊死の程度を予測でき、腫瘍の悪性度などが画像から判別できるのではないかと考えた。昨年度はそのソフトウェアを開発した。 本年度はそのソフトウェアで実際の症例を解析してみた。すると、種々のアーチファクトがADC 値に影響していることがわかった。アーチファクトはとくに脂肪とそうでない部分の境界に生じているように見え、その原因の一つが脂肪抑制方法に関するものだということが推測された。現在、アーチファクトを再現するためにファントム作成を行っており、それによりアーチファクト軽減の方法、さらには画質改善方法を研究している。 これらの研究過程でADC値を利用することにより、脂肪抑制失敗アーチファクトを画像から取り除くことを示し、乳がん画像研究会で発表した。また、前立腺癌においてADC値を利用することにより作成した計算画像と前立腺癌の悪性度に相関することがわかり、誌上発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度開発に成功したソフトウェアでMRI画像を解析しようと思っていたが、解析に取り掛かると、MRIの画像に種々のアーチファクトによる影響があることがわかり、それが無視できないことがわかってきた。そこで症例解析を後回しにして、どのようなアーチファクトが生じてどのような影響が画像に生じているかを現在検討している。現在はアーチファクトを再現するためにファントムを自作している。このため、当初よりも研究の進展はやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
脂肪抑制方法による画像への影響を検討する。代表的な2種類の脂肪抑制方法(SPAIR法とSTIR法)の画質やアーチファクトについて検討する。また、ファントムを作成して脂肪と軟部組織の境界に生じるアーチファクトやそれによるADC値への影響を検討する。 その後、2016年度開発に成功したソフトウェアにより腫瘍辺縁部分と中心部分の信号値の違いを様々ながんで測定する。そしてそれらとさまざまなバイオマーカー(Ki-67、ホルモンレセプター、Her2レセプター)、や予後(無病再発率、転移の出現の有無、生存率)との関係を研究していく。そして将来的にはオーダーメイド医療に役立つものになるよう研究を進めていく。また、今年度学会発表した内容の論文化も進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
費用の見積もりを厳しくしていたため、予定していたソフトウェアの購入を延ばしたために残額が生じた。 画像解析ソフトウェアであるOsyrix MD(約10万円)を購入する予定である。
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