研究課題
近年悪性腫瘍のさまざまなバイオマーカーが発見され、オーダーメイド医療に活用されるようになってきた。バイオマーカーの測定には生検などが行われるが、原発巣と転移でマーカーの発現が異なることが少なくない、などの理由で画像診断への期待が高まっている。画像所見とバイオマーカーとの関係も解明されつつあるが、解析方法は平均値など単純なものであり、得られた情報の一部しか使われていないと感じる。ところで、悪性腫瘍は不均一であり、とくに病巣周辺部と中心部ではかなり異なる環境にあることはよく知られている。たとえば壊死は腫瘍の中心部分で起こり やすく、悪性度の高いがんは中心部に壊死を伴うことが多いことが知られている。MRI拡散協調像から得られるapparent diffusion coefficient (ADC)値は細胞密度と逆相関にあることが報告されている。そこで、腫瘍の辺縁部分と中心部分を自動的にわけてADCを測定するソフトウェアを開発した。それを実際の症例で解析を行い、Ki-67(腫瘍の分裂度、つまり悪性度)とこの辺縁部分と中心部分のADC値の差は有意な相関関係が見られたこと、また乳房腫瘤の良悪性鑑別においてその鑑別精度をADC値だけを用いる場合よりも向上することを示した。研究の過程で、ADC値測定への周囲脂肪組織の影響を実感した。そこで脂肪のADC値の測定を行い、がんよりも非常に低値であることを確認した。また、このことをコンピューターによる拡散強調画像改善に用いると、拡散強調画像で問題となる脂肪抑制失敗によるアーチファクトを軽減できることを見つけた。これにより、拡散強調画像による乳がん診断において、診断精度が有意に向上することを示すことができた。
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