研究実績の概要 |
昨年度までの検討にて、肝実質の31P MRスペクトロスコピーの至適撮像条件が固まったので、今年度は糖尿病患者における31Pを用いた肝臓MRスペクトロスコピーの臨床的有用性について検討した。撮像には、シーメンス社製3T MRI装置、31P/1H loop RF coil (12 cm径,高島製作所) を使用した。安定して良好なスペクトルが得られる右側臥位にて撮像し、ATPスペクトルピークの比較を行った。同意を得られた糖尿病患者に対し、上記の検討で確立した至適撮像条件で31Pを用いた肝臓MRスペクトロスコピーを、糖尿病治療食での食事療法直前と食事療法開始1週間後の2回撮像した。直接測定した肝臓内のATP等のスペクトルデータを31P MRスペクトロスコピー専用のソフトで解析した。複数のスペクトルデータから肝臓の糖代謝及びリン脂質代謝に半定量的に評価する方法として、β-ATPの信号強度と全Pスペクトルの信号強度の比(β-ATP比)が最も適していた。食事療法が奏功しなかった群に比して、食事療法が奏功した患者群では、食事療法開始1週間後のβ-ATP比がより上昇した。肝臓の糖代謝及びリン脂質代謝の改善により、β-ATPの消費が減少したため、結果としてβ-ATP比がより上昇したと考えられた。 肝臓における31P MRスペクトロスコピーの研究報告は少なく、本研究では撮像条件の検討も1から始めないといけなかったが、撮像体位を含めた31P MRスペクトロスコピーの至適撮像条件を確立することができた。さらに臨床例での検討から、肝臓の糖代謝及び細胞膜のリン脂質代謝の変化を評価する方法として、31Pを用いたMRスペクトロスコピーが有用であると思われた。 なおこれまでの成果は、第44回、第45回日本磁気共鳴医学会にて、発表した。
|