研究課題/領域番号 |
16K10337
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
吉田 光明 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 教授 (60182789)
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研究分担者 |
三浦 富智 弘前大学, 保健学研究科, 准教授 (20261456)
有吉 健太郎 弘前大学, 被ばく医療総合研究所, 助教 (50462750)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 染色体線量評価 / 細胞同調法 / PCC法 |
研究実績の概要 |
本研究では細胞同調法とPCC法を併用し染色体線量評価法の高精度化を目的としている。分裂刺激剤で処理された末梢血リンパ球は細胞周期を開始するが、リンパ球の細胞周期の同調を行う場合には、一般的にDNA合成期(S期)の前半で細胞周期を停止させ、その後に周期を再開させて染色体の形態をとるM期へと進行させる。とくにPCC-ring法の場合にはG2/M-PCCを解析の対象としているため、同調させた後のリリース時間が大きな問題となる。今回は、リリース時間を6, 7, 8, 9, 10時間に設定し、G2/M-PCCの頻度を調べたところ非照射群において高頻度に得ることが出来た。一方、5, 10, 15,20GyのX線で照射したリンパ球のリリース時間を解析した結果、5Gyでは6~7時間処理において高頻度にG2/M-PCCの像が得られた。また、10Gy以上の照射では6~7時間のリリースではG2/M-PCCの頻度が低下し、S-PCCの頻度が多くなった。これは高線量放射線の照射によって細胞周期の遅延が誘発されていると考えられる。5Gyを超える照射を受けたリンパ球では8~10時間のリリース処理において高頻度にG2/M-PCCが得られた。これらの結果を総合すると、5Gy以上の高線量被ばくが想定される場合に細胞同調法の併用化では8時間のリリースが最適と考えられる。 本研究では、また、従来法(PCC法のみ)と細胞同調を併用した場合とでG2/M-PCCの頻度に差が有るか否かの検証フローサイトメトリーを用いて行った。その結果、非照射群では細胞同調併用法において効率よくG2/M-PCCを捉えることが出来た。一方、5Gy以上の照射では同程度の頻度となり有意な差は認められなかった。今後は、実際の染色体増を用いて染色体異常の解析を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞同調法を併用する場合に一般的にS期同調法が用いられる。この過程で大きな問題となるのが同調後のリリース時間である。また、高線量の放射線を浴びたリンパ球は細胞周期を開始後も、アポトーシスが誘導されたり、細胞周期チェックポイントによって細胞周期が停止する場合があり、リリース時間の決定が極めて重要となる。本年度の研究において5Gy以上の照射においてリリース時間を決定できたことは大きな収穫である。従って、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
5Gy以上の照射において細胞同調法を併用した結果、G2/M-PCCに有意な差が認められなかった。さらに20Gy ではむしろ従来の方がG2/M-PCCの頻度が高かった。これはアポトーシスや細胞周期の遅延が誘発されていることが起因している可能性が一つの要因として考えられるが、他方、細胞同調に用いるメソトレキセートや同調後リリース時間に処理するチミジンの影響も否定できない。また、しかし、PCC法のみの従来法と細胞同調法の間でG2/M-PCCがほぼ同程度の頻度で得られたことは大きい。今後は、G2/M-PCCの獲得効率を上げるため、メソトレキセートやチミジンの影響を検討するだけではなく、他の同調法も検討する必要があると考えられる。また、それぞれの処理法における染色体異常の頻度を解析しなければならない。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたよりも、物品費を安く抑えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
他の細胞同調法を用いた際の、染色体異常頻度の解析をしていく。
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