研究課題
本研究では低線量から高線量までの広範囲にわたる被ばく線量評価法の開発を目的として、細胞同調法の適用性の検証を行ってきた。これまでの研究から、0~15Gyの広範囲にわたって、8時間のリリース(細胞周期の再開)処理を行う細胞同調により高頻度のG2/M期の細胞を得られることが明らかとなった。今回はこのような細胞同調法の適用及びリリース時間の差が放射線によって誘発される染色体異常、とくに環状染色体の頻度に影響があるか否かを種々の処理における環状染色体の解析を行った。その結果、20Gy以上になると飽和状態となり、環状染色体の頻度が低下する事,同一のリリース時間(7時間)で比較すると大きな差は得られなかった。一方、同じリリース時間(10時間)で線量を変えて、環状染色体の頻度を解析すると、これまでと同じように線量依存性が確認された。さらに通常のPCC法と細胞同調法(リリース8時間)を適用した場合で、環状染色体の頻度を比較した結果、10Gy以上の線量において、細胞同調法を適用した例の方が環状染色体の頻度が低くなった。また,PCC-ring法による検量線の作成を試みたところ、15Gyの線量において細胞同調法より約4分の一の出現頻度になった。現在、Dic法や転座法についてはISOによる標準化がなされているにも関わらずPCC-ring法の標準化は勧められていない。この要因として、環状染色体の判定基準が確立されていない事、通常のPCC法ではカリクリンA処理によって染色体が過剰凝縮する場合もあり、環状染色体の認定が困難となることが大きな要因と考えられる。本研究ではリンパ球培養法について、採取した血液の保存や輸送方法についても検討した。その結果、採取した血液は室温保存が必要である事、EDTAで採血した血液は4℃保存することによって、ヘパリン採血と同様の分裂頻度が得られることが明らかとなった。
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Int. J. Radiat. Biol.,
巻: 95 ページ: 186-192
10.1080/09553002.2019.1539882