研究課題
昨年同様に,癌幹細胞をtargetにした治療は,癌幹細胞が治療抵抗性の原因である可能性があることから,癌の再発予防につながり,ひいては移植後の肝癌再発予防につながることが期待されると考え,肝細胞癌における癌幹細胞をtargetとした治療法の開発を目指すこととした.今回は幹細胞マーカーとされるc-Metに着目し,肝細胞癌に対する治療としては肝動脈化学塞栓療法(TACE)に着目した.TACEは,癌細胞を低酸素状態にすることで抗腫瘍効果を示す治療法であるが,施行することで治療に対する反応性が悪くなる場合がある.このような「TACE不応」と呼ばれる治療抵抗性はTACE治療における問題点であるが,その機序は明らかにされていない.今回,TACEによって誘導される環境とc-Metの発現に注目し,c-Met発現状況の解析に基づくTACE不応の機序を解明することを目的とした.実際,術前TACE施行後に肝切除を施行した症例(TACE群)および術前TACEを施行せずに肝切除を施行した症例(非TACE群)における癌部切除標本におけるc-Metの発現を比較し,TACEによる癌部におけるc-Metの発現への影響を検討した.更に,TACE不応病変に対して肝切除を施行した症例の癌部切除標本におけるc-Metの発現も評価した.結果,TACE群においてc-Met高発現を示す症例の割合は61%で,非TACE群(27%)と比較して有意に高かった.TACE不応症症例においてc-Met高発現症例の割合は93%であり,非常に高値であった.これらの結果は,TACEによるc-Metの発現誘導がTACE不応の機序の1つである可能性を示唆するものであった.この結果は,c-Metの発現状況を調整することで肝癌の治療抵抗性を克服し,ひいては移植後の肝癌再発予防につながることを示唆するものであり,非常に意義深いと考えられた.
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)
Dig Dis Sci
巻: 64 ページ: 792-802
10.1007/s10620-018-5380-1
Ann Gastroenterol Surg
巻: 3 ページ: 75-95
10.1002/ags3.12217
Ann Surg Oncol
巻: 25 ページ: 3728-3737
10.1245/s10434-018-6670-8
Transplantation
巻: 102 ページ: 1293-1299
10.1097/TP.0000000000002126