研究課題/領域番号 |
16K10430
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高田 泰次 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (10272197)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肝移植 / トランスレーショナル研究 |
研究実績の概要 |
肝移植医療におけるドナー不足に対する方策として心停止後ドナー(DCD)からの肝移植が注目されているが、脳死肝移植に比べて移植後早期のグラフト機能不全と、胆管狭窄などの胆管合併症の危険性が高いことが指摘されている。これらDCDからのグラフト肝に生じる合併症の原因として、通常の肝移植における冷保存再灌流障害に加えて心停止前後の肝温虚血が上乗せされるため、肝微小循環障害がより強く出ることが考えられる。本邦での現状において、DCD肝移植を臨床導入するための課題として1)この肝微小循環障害を軽減しグラフト肝機能を保護する方法、2)保存後の移植直前の時点でのグラフト肝viabilityの正確な評価法、の2つを確立することが必須である。本研究はDCD肝移植の臨床に踏み切るためのトランスレーショナル研究として、ブタ肝移植実験によってこれらの課題について検討することを目的として開始した。 これまでの成果として、1)まず愛媛大学総合科学研究支援センターの中の動物実験センターでブタ肝移植実験のモデル作成を行い、非障害グラフトでの肝移植による生存を得られるようになった。さらに数頭のDCDブタからのグラフトを用いた肝移植手術に取り組んでいる。2)またブタ肝移植実験と平行して、グラフト肝機能保護のため微小循環障害を軽減するpharmacological protectionとして有効な薬剤併用による「recovery system」開発のためにラットDCD肝移植事件も行い、これまでリコモヂュリンなどの数種類の薬剤の効果を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ブタ肝移植実験を行うための人員を集めることに苦労し、肝移植実験実施数がやや少なくなった。そのための対策として人手が少なくて済むラットDCD肝移植実験を平行して行い、pharmacological protectionの開発を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
DCDグラフト肝に生じる虚血再灌流障害において、活性酸素、TNF-αなどのサイトカイン、血小板活性化因子、エイコサノイド、エンドセリンなどの多くの炎症性メディエーターが密接に関与していることが証明されている。そこでこれら炎症性メディエーターを阻害する薬剤を複合投与することにより肝微小循環障害を軽減しDCDからのグラフト肝機能を保護できる可能性を追求していく。前臨床研究である本研究では、pharmacological protectionのための薬剤は現在臨床使用されているものとし、有力な候補として好中球エラスターゼ拮抗剤(シベレスタット)、肺動脈性肺高血圧治療薬であるエンドセリン受容体拮抗剤(ボセンタン)や合成プロスタサイクリン(エポプロステノール)、血小板活性化因子受容体拮抗剤(ルパタジン)、抗TNF-α抗体(インフリキシマブ)などがあり、これらの単剤または併用での効果を検討する。薬剤はwash-out液や冷却保存液に加え、さらには移植手術開始時からレシピエントに投与することにより、グラフト肝機能保護効果を検討する。
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