研究課題/領域番号 |
16K11028
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
久保 誠 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (40464804)
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研究分担者 |
佐藤 威文 北里大学, 医学部, 准教授 (50286332)
石山 博條 北里大学, 医学部, 講師 (60343076)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 放射線治療 / Endogenousワクチン / cfNA / 樹状細胞 |
研究実績の概要 |
腫瘍免疫解析の進歩により、放射線治療に伴う抗腫瘍免疫応答誘導の可能性が近年報告されてきている。申請者らのこれまでの検討においても、通常診療にて放射線治療を実施した前立腺癌患者での活性化T細胞の経時的な上昇が確認されており、放射線治療によって誘導される内因性ワクチン効果の存在を示唆している。 しかしながら、これまでの先行研究におけるT細胞活性化の誘導機序の詳細は未だに明らかではない。そこで本研究は、放射線治療によるT細胞活性化の機序解明を目的として、放射線治療によって誘導放出されたcell-free nucleic acid(cfNA)やミトコンドリアDNAが樹状細胞を活性化させ得るのか検証することとした。 まず、放射線治療を実施した前立腺癌患者末梢血を用いてT細胞活性化に関与する樹状細胞サブセットの動態について解析を行った。ヒトのミエロイド系樹状細胞は大きくCD1c陽性のBDCA-1とCD141陽性のBDCA-3サブセットに分けられる。特にBDCA-3は細胞傷害性T細胞の誘導に関与すると言われている。解析の結果、ヨウ素125永久挿入密封小線源療法(LDR)を実施した患者で、BDCA-1サブセットは治療に伴い大きな変化は認められないものの、BDCA-3サブセットは治療開始後150日まで一旦減少する傾向であったが、それ以降再び上昇してくる傾向を認めた。活性化T細胞の動態は治療に伴い徐々に上昇しており、この上昇とBDCA-3の変化の関与が示唆された。 現在、これらの患者血漿中のcfNAについて解析を実施している。これまでの解析で前立腺癌患者ではcfNAが高値に検出されるようだが、治療法の違いによってもcfNA値が異なる可能性を示唆している予備的な結果も得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
放射線治療を実施した前立腺癌患者末梢血より治療前後の樹状細胞サブセットBDCA-1, BDCA-3の解析を実施し順調に進行している。また、血漿も同時に分離し、保存していたものも含めて順次cell-free nucleic acid(cfNA)を測定しており、これらの解析に関しては概ね順調に進展していると思われる。 当初平成28年度に計画していた酸化修飾された循環8-Oxyguanine含ミトコンドリアDNAのドットプロット解析については、実験系を確立してる途中にあり、こちらの方は当初より若干遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度計画の継続遂行ならびに治療後のcell-free nucleic acid(cfNA)、ミトコンドリアDNA(mtDNA)とT細胞活性化の関連性フォローアップを実施する。また、目標症例数を踏まえて新規患者の登録と解析についても引き続き継続していく。さらに、累積症例における統計学的な解析も行い、放射線治療により放出されるcfNAやmtDNAが与えるEndogenous(内因性)ワクチン効果の機序を明らかにしていく。 また今後、樹状細胞を用いて、cfNAやmtDNAが樹状細胞を活性化できるかについても検討を加えていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画では抗ヒトCD抗体を購入して多く使用しているが、この総購入金額が当初の予定より安価に購入できたこと、また当初予定していた学会への参加が諸事情によりキャンセルとなり、そのため次年度への繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度も引き続き末梢血中のリンパ球単球サブセットの解析、ドットブロット解析などを実施していく。その中で使用頻度の高い抗体等の購入についても適切な購入に努めていく。
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