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2016 年度 実施状況報告書

卵巣癌におけるレチノイン酸シグナル伝達の機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 16K11130
研究機関群馬大学

研究代表者

平川 隆史  群馬大学, 大学院医学系研究科, 講師 (80375534)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード卵巣癌 / シグナル伝達
研究実績の概要

レチノイドは急性前骨髄性白血病の治療に臨床的に使用されており、将来的には肝細胞癌や肺癌においても臨床応用される可能性が高いが、卵巣癌に対する抗腫瘍効果については検討されていない。Pin1 は発癌に関与する種々の蛋白のリン酸化に関与しており、癌増殖において中心的な位置づけにあることで注目されている酵素である。近年白血病細胞や乳癌細胞において、レチノイドがPin1 の機能を修飾することで癌の増殖を抑制しうることが報告された。本研究は卵巣癌に対するレチノイドならびにPin1阻害剤の抗腫瘍効果を評価し、将来の治療応用の可能性を探る事を目指した。昨年度は下記検討を行った。
卵巣癌培養細胞株におけるレチノイドあるいはRA シグナル伝達による腫瘍増殖の制御について卵巣癌の培養細胞株を用いて検証するため、上皮性卵巣癌細胞株6種類を使用し、レチノイド5種あるいはPin-1阻害剤3種の投与による増殖抑制をMTTアッセイで評価し、低濃度で抗腫瘍効果の確認される薬剤と細胞株の組み合わせを同定した。
今後は卵巣癌細胞株におけるRA シグナル伝達経路について、そこに関連する蛋白質を解明し、卵巣癌の臨床検体を用いてRAシグナル伝達に関与する因子(RAR, RXR, CYP26, BRCA, Pin1 など)の発現状況を確認し、臨床情報(予後、組織型、進行期、リンパ節転移の有無など)との間に相関関係があるか評価する。さらにRA の抗腫瘍効果を動物実験モデルで評価し、最終的にはRA の卵巣癌の治療への応用や、その際のバイオマーカーの選定に関する情報を得ることを目指し、今年度以降の研究を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究全体における平成28年度の位置づけは、卵巣癌シグナル伝達の検討を行う細胞培養系について、最適となる卵巣癌培養細胞とレチノイド・Pin1阻害剤の組み合わせを抽出し、今後の実験モデルを確立する期間としていた。この点について概ね良好な結果をうることができた。

今後の研究の推進方策

昨年度の研究でレチノイドとその誘導体、あるいはPin1阻害剤の添加により卵巣癌細胞株の増殖が抑制されることが示されたが、その機序はまだ不明な点が多い。低用量で増殖抑制が見られるレチノイド、Pin1阻害剤と卵巣癌培養細胞株の組み合わせを使用し、RAシグナル伝達経路と細胞増殖抑制の機序に関する解析を進める。具体的には培養細胞株におけるRA関連タンパク質の発現状況をWestern blotで評価する。
RAはRARと結合後、標的遺伝子のRAREに結合し、co-factor の修飾を受け、標的遺伝子の転写活性を調節する。この古典的なRA シグナル伝達の制御を受ける遺伝子としてFOXO などが知られているが、近年肝細胞癌を用いた検討で新たに26 個のレチノイン酸応答性遺伝子が同定された。これらは卵巣癌細胞においてもRA に応答する可能性があるため、当該遺伝子の5primeを組み込んだレポーター遺伝子を作成し、卵巣癌細胞株に遺伝子導入し、ルシフェラーゼアッセイで転写活性の変化を評価する。
臨床検体を用いてRA関連タンパク質、あるいはPin1の発現と腫瘍の予後の相関について、免疫染色で評価する。
古典的RAシグナル伝達経路におけるRARE に結合する転写因子、受容体の解析について、卵巣癌細胞株においてレチノイン酸応答性遺伝子がRA 刺激によって誘導あるいは抑制を受けているかをChIP アッセイで評価する。上皮性卵巣癌細胞株をRA 刺激前後でlysate を回収し、RAREに結合しうる転写因子や受容体に対する抗体(抗アセチル化ヒストン抗体、抗RAR 抗体、抗RXR抗体など)を用いて免疫沈降し、FOXO や上述の文献1 で見いだされた遺伝子群のプロモーター領域にあるRARE 前後の塩基配列についてPCR を行い、転写領域と蛋白質の結合の有無、RA 刺激による結合の変化について解析する。

次年度使用額が生じた理由

細胞と薬剤の組み合わせのスクリーニングに当初予定していたより多くの時間を要したため、卵巣癌細胞におけるRAシグナル伝達経路の解析までは至らなかった。そのため、シグナル伝達評価のための消耗品などが計上されず、繰越が必要となった。

次年度使用額の使用計画

本年度以降はRAシグナル伝達についての詳細の解析を行う予定であり、キットを含めた消耗品を使用して今後の研究を行う予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Retinoic acid enhances progesterone production via the cAMP/PKA signaling pathway in immature rat granulosa cells2016

    • 著者名/発表者名
      Hiroto Suwa , Hiroshi Kishi , Fumiharu Imai , Kohshiro Nakao , Takashi Hirakawa , Takashi Minegishi
    • 雑誌名

      Biochemistry and Biophysics Reports

      巻: 8 ページ: 62 67

    • DOI

      10.1016/j.bbrep.2016.08.013

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] レチノイン酸が顆粒膜細胞におけるプロゲステロン産生に及ぼす効果2016

    • 著者名/発表者名
      諏訪 裕人, 岸 裕司, 中尾 光資郎, 今井 文晴, 平川 隆史, 峯岸 敬
    • 学会等名
      第68回日本産科婦人科学会学術講演会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2016-04-21 – 2016-04-24

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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