研究実績の概要 |
当科で2007年~2012年に手術を施行し上皮性悪性卵巣腫瘍と診断した95例について、免疫組織化学染色法で腫瘍組織におけるPin1発現を評価し、組織型や臨床進行期、無増悪生存期間、全生存期間との関連を評価した。Pin1は漿液性癌に強く発現する傾向を認め、Pin1の発現強度が無増悪生存期間、全生存期間と関連する可能性が示された。 上皮性卵巣癌培養細胞株に発現する内因性Pin1発現をWesthern blotで評価したところ、漿液性癌由来の細胞株であるSKOV3, OVSAHO、明細胞癌由来の株であるTOV-21Gで強発現が確認された。漿液性癌由来のOVCAR3, KURAMOCHIでは弱発現、粘液性癌由来のMCASでの発現は確認されなかった。 上皮性卵巣癌培養細胞株6種(漿液性癌株4種 SKOV3, OVCAR3, KURAMOCHI, OVSAHO、粘液性癌株1種 MCAS, 明細胞癌株1種 TOV-21G)におけるPin-1阻害剤3種(Juglone, PiB, EGCG)の投与による増殖抑制効果をMTTアッセイで評価した。SKOV3におけるEGCG添加によるic50は5.93μM、OVSAHOにおけるJuglone添加によるic50は7.26μMであり、他の組み合わせと比較して低濃度であった。 以上より臨床検体におけるPin1発現が卵巣癌の予後と関連し、細胞実験においてはPin1の機能抑制によって腫瘍増殖が抑制される可能性が示された。総じてPin1は卵巣癌治療の標的分子の1つになりうることが示唆された。
|