研究課題
本研究では平成27年度に厚生労働省によって難病指定された好酸球性副鼻腔炎の病態解明と新規治療法の開発を目指している。我々は好酸球性副鼻腔炎の病態解明、および治療のターゲットを難治性で易再発性の鼻茸に定めている。鼻茸は鼻・副鼻腔粘膜の浮腫が遷延化しでできる構造物で生体内でも他にこのような病変を認めることはほとんどない。我々は鼻粘膜における創傷治癒過程の障害が粘膜浮腫が遷延する原因と考え線溶系と凝固系のバランスの破綻が好酸球性副鼻腔炎の病態に関与していると考え研究を進めている。平成28年度に行った研究において好酸球性副鼻腔炎患者の鼻粘膜においてフィブリン網の沈着が非好酸球性副鼻腔炎と比較して有意に増加していることを明らかにした。さらにTh2炎症が線溶系を抑制し、凝固系を亢進させていることも明らかにした。これらの研究結果から鼻粘膜におけるTh2炎症がフィブリンの過剰な沈着を粘膜下に生じさせることが過度の粘膜浮腫の原因であるとの結論に至った。平成29年度はこれらの研究結果を踏まえ好酸球性副鼻腔炎の鼻茸は鼻粘膜に過剰に形成されたフィブリンを溶解することで劇的に鼻茸を縮小させることができるという仮説のもと、いくつかの線溶物質を手術の際に採取した鼻茸に直接作用させその効果の検討を解析した。その結果日本における伝統食品で千年以上の歴史がある納豆に含まれるナットウキナーゼに鼻茸を著明に縮小させる効果がある事を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度に行った研究結果をもとに鼻茸を縮小させ得る線溶物質に注目してそれらの鼻茸への直接の作用について検討を行い、ナットウキナーゼに鼻茸を縮小させる効果がある事を発見することができた。
凝固系と線溶系は血管内における止血効果の制御だけではなく、最近では炎症組織局所の血管外においても生体防御機構において様々な役割がある事が分かっている。しかし凝固系、線溶系の制御がアレルギー炎症にどのように関与しているのかはほとんど分かっていない。我々の今回の研究テーマである好酸球性副鼻腔炎ではアレルギー炎症が疾患の難治化にどう影響しているかはまだ十分に解明されておらず、これらの病態への関与メカニズムを解明することは疾患の制御にとって非常に重要である。平成30年度は好酸球性副鼻腔炎の病態に重要であると言われている好酸球と肥満細胞が凝固系、線溶系にどのように関与しているのか検討する。好酸球は人末梢血から分離したものとEol-1細胞を用いて検討し、肥満細胞に関しては血液幹細胞CD34陽性細胞からサイトカイン刺激を行う事でヒト肥満細胞に分化させて検討に用いる。
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