研究課題
近年増加傾向にあり平成27年に厚生労働省によって難病登録された好酸球性副鼻腔炎に関する研究を行った。従来蓄膿症として知られている慢性副鼻腔炎が好中球性の炎症を主体とした副鼻腔における膿汁の貯留を特徴とするのに対し、好酸球性副鼻腔炎は鼻副鼻腔粘膜に著しい好酸球の浸潤が認め、鼻副鼻腔の粘膜浮腫、および難治性、易再発性の鼻茸を特徴とした疾患である。気管支喘息や好酸球性中耳炎を高率に合併しお互いの病勢に影響を与える事から他領域を含めた包括的な病態の解明と治療方法の開発が重要である。我々はこれまでの研究で好酸球性副鼻腔炎の鼻茸を含めた粘膜浮腫は鼻副鼻腔粘膜に置けるフィブリン網の異常沈着が原因であることを明らかにしている。これらを踏まえ鼻茸の治療を行う上でフィブリン網を分解することで鼻茸を縮小させる事が出来ると考えて研究を行った。フィブリン網の分解には線溶活性を有するプラスミン、ヒルジン、ナットウキナーゼ、そして抗凝固作用を有するヘパリンをそれぞれ摘出鼻茸に作用させ影響を検討した。鼻粘膜に浸潤した好酸球の凝固系に与える影響を検討するために、二次元電気泳動法によって鼻茸で有意に変化がみられる分子をスクリーニングし機能解析を行った。生体内で主にフィブリン網の分解を担っているプラスミンが鼻茸を縮小させ、さらにセリンプロテアーゼであるナットウキナーゼでは劇的な縮小効果を認めた。好酸球性副鼻腔炎の最重症例であるアスピリン喘息の鼻茸においてL-plastinの発現が亢進しており、凝固系の起点である組織因子(tissue factor)を細胞表面に輸送し、組織における凝固系を亢進させることを明らかにした。好酸球性副鼻腔炎における鼻茸形成には好酸球による凝固系亢進が深く関与し、鼻粘膜に過剰に沈着したフィブリン網はナットウキナーゼによって分解できることを明らかにした。
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