研究課題
アルツハイマー病、パーキンソン病などの神経変性疾患では、早期に嗅覚障害が出現し、発症した患者ではほとんどの症例で嗅覚障害を伴うことが知られている。そのため、嗅覚障害はこれらの疾患の早期発見のためのバイオマーカーとなりうるのではないかとの仮説に基づき、本研究を進めてきた、前年度までに健常高齢者、軽度認知障害(MCI)患者、アルツハイマー病患者を対象として、嗅覚検査(Open Essence)、MRI(VSRADによる海馬、嗅内皮質の計測、嗅球体積の計測)、血液検査(ApoE4)、認知機能検査(MMSE)、食品摂取頻度、生活機能測定を行い、疾患による影響を検討した。その結果、MCI、アルツハイマー病と進行するにつれて、嗅覚機能、認知機能、嗅球体積、海馬、嗅内皮質体積が減少することが判明した。また、それらの機能低下は、手段的動作能、生活機能、問題行動、介護負担と強く相関した。さらに、嗅覚同定能と認知機能は、蛋白摂取量、発酵食品摂取度、歩行速度とも相関した。以上の結果から、認知機能の低下は、嗅覚機能と強く相関し、嗅覚機能、嗅球体積等の測定により、認知機能の低下を予見できる可能性が示唆された。今年度は更に症例の蓄積を行い、データ解析を発展させる予定であったが、新型コロナウイルス感染症の流行により、十分な症例の蓄積が行えなかった。
3: やや遅れている
症例数は順調に蓄積されているが、さらなる蓄積と最終的な統計解析を行う予定である。
新型コロナウイルス感染症の流行により、症例の蓄積が十分に行えず、また、予定していた国際学会(欧州鼻科学会、ギリシャ)、国内学会への旅費支出がなかったため。
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