研究課題/領域番号 |
16K11611
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研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
渡邉 誠 東北福祉大学, 総合福祉学部, 教授 (80091768)
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研究分担者 |
土谷 昌広 東北福祉大学, 健康科学部, 准教授 (60372322)
萩原 嘉廣 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (90436139)
水野 康 東北福祉大学, 教育学部, 准教授 (40261789)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯周病 / 睡眠障害 / 口腔ケア / ストレス / 慢性痛疾患 |
研究実績の概要 |
睡眠は心身の健康を維持する上で非常に重要な基盤であり,睡眠障害は精神および身体疾患を総じて増悪させる傾向にある3).口腔環境においても同様であり,睡眠障害患者においては歯周疾患の高い罹患率が報告されている2).しかしながら,これらは睡眠障害患者を対象として行われた調査が主体であり,一般人口においてはほとんど検討されていなかった. 我々は,大規模な被災者健康調査の結果から,歯周疾患と不眠症の罹患とが強く相関することを示した.それらの因果関係については,睡眠障害患者においては歯周病が悪化していることを示す報告は存在する一方で,口腔環境の改善が睡眠の質的向上に繋がるかについては不明である. 口腔ケアによる介入は口腔内感染源の除去のみならず,口腔機能やADLの改善に繋がることが報告されている.本研究では介護施設において専門的口腔ケア介入を実施し,口腔衛生状態の改善・維持が睡眠の質的改善に直結することを明らかとし,睡眠障害患者への歯科的介入の有効性を示す.くわえて,歯科医療の社会的意義を高める一助となる. 本年度は、腕時計型3次元加速度センサー(アクチグラフ)を介護施設入居者(5名)に装着し、口腔ケア介入前後、もしくは有無の差からその活動度にどのような変化が見られるかについて検討を行った。従来の活動度が低い対象者では、口腔ケア後に傾眠傾向に陥る結果が見られたが、夜間の睡眠量には大きく影響を及ぼしていない感じであった。平成30年度は被験者を更に増やし、介入による効果について明確とすることを目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Population-basedなデータの解析は順調に進んでおり、睡眠障害と肩凝りを含む顎顔面疼痛との関わりについては論文発表なども随時行えており、全く問題無い状況といえる。その一方で、施設入居者における睡眠障害や生活リズムの破綻については,やはり個人差が大きく、背景となる因子の部分で論文発表まで行うことを目標とするには更なる検討・解析が必要と言える。特に睡眠障害については、介護職員間でもその介入の質・量的な差が明確であり、これらの補正は倫理的な限界も含まれている。 本年度の総括として,我々の仮説を立証するうえで非常に有用な結果が出たものと考えられる.すなわち,本研究計画に則った内容で査読有論文を数報発表することができた。反対に来年度については本年度の研究内容を更に発展させる内容となるが、どうしても論文発表という業績部分の明瞭さから、大規模調査の解析がチーム内でも優先されてしまう傾向にある。今後もpreliminaryなものを含めて、調査の解析を複数進める予定である.まとめとして,今後の我々の研究計画を進める上で,重要な指針を与える結果が本年度は得られたものの、本研究課題の最終目標への到達には更なる検討と解析が必要な状況と言える.
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今後の研究の推進方策 |
睡眠の問題は心身共に直接的に疾患へと繋がるリスクが高く,その慢性化はQOLを大きく低下させる.歯周病も成人の8割が罹患するとされており、睡眠と同様に国民病と言える状況である.これら二つの疾患はともにself-management(生活習慣や健康行動の自己管理)に因る部分が大きく,我が国の抱える医療費問題からもその重要性は高まる一方である.しかしながら臨床の現場では,睡眠障害に対する治療法に関しては未だ薬物療法等が主体となっており,行動認知療法への理解は深まっているとはいえない. 本年度も大規模調査のデータ解析と介護現場での口腔ケアの効果の症例レベルの解析を並行して行っていく予定である。症例シリーズでの研究結果をまとめる時期については、背景因子がある程度統一された状況で行うことが望ましく、必ずしも介入全が増えれば良いという状況では無いため、今後も更なる実験条件の調節と検討が必要と考えられる。 本研究結果から示される,口腔疾患と睡眠障害の密接な関係,そして睡眠障害治療における新しい選択肢の一つとしての歯科医療の提示は,睡眠障害の発症メカニズム解明の一助となるだけで無く,我が国の国民の健康維持・増進に直結するものである.今回提示される口腔健康行動の新たな意義は従来のものとは全く異なり,極めて独創性に溢れたものと言え,歯科医療による社会的貢献をより明確なものとし,臨床的にきわめて意義のある研究であるといえる.
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次年度使用額が生じた理由 |
論文の掲載料のための次年度繰り越し。
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