研究課題/領域番号 |
16K11772
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
菅原 利夫 愛知学院大学, 歯学部, 客員教授 (10116048)
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研究分担者 |
井村 英人 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (10513187)
平田 あずみ 大阪医科大学, 医学部, 講師 (40263587)
南 克浩 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (70346162)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 口蓋裂 / 口蓋突起 / 基底膜 / セロトニン |
研究実績の概要 |
(研究の目的) 二次口蓋形成は、①口蓋突起の下方への伸張、②口蓋突起の舌の情報への水平方向への転移、③左右口蓋突起の癒合、④口蓋の間葉組織の結合による癒合の完了の発育段階に分けられる。この中で、③口蓋突起の癒合期における多彩な細胞、分子レベルの相互作用をカスパーゼや、TUNEL法を用いたapotosis に関する研究、そして上皮細胞の間葉系細胞への形質転換(EMT)や細胞接着因子に関する研究が行われているが、口蓋突起の発育・癒合に関する基底膜の動態および遺伝子からの口蓋裂発症メカニズムについては十分に解明されていない。本研究は口蓋突起の伸張、水平転移、骨形成などにかかる基底膜の代謝機構および遺伝子の変化から口蓋裂発症のメカニズムを解明する。 (本年度の研究の概要と結果) セロトニンはニューロトランスミッターとしての機能に加え、神経堤細胞の遊走や頭蓋・顔面などの初期発生への関与、骨代謝、血管拡張などの生理機能、上皮の代謝調節因子として作用する。セロトニンの口蓋形成への関与を明らかにするために、セロトニン (5-HT) , セロトニントランスポーター (SERT) および代謝酵素であるモノアミン酸化酵素(MAO) 局在について検討した。 (1)口蓋形成初期には口蓋突起に5-HTが局在することが示唆された。(2)口蓋形成の進行とともにSERTは口蓋部上皮細胞に局在するようになることが示唆された。(3)SERTにより上皮細胞内へ取り込まれた5-HTはMAOAあるいはMAOBにより代謝されることが推察された。(4)5-HT, SERT, MAOAおよびMAOBの上皮有棘層から基底層への類似した局在性より、これらが口腔粘膜上皮の増殖・分化に関与することが推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セロトニン (5-HT) , セロトニントランスポーター (SERT) および代謝酵素であるモノアミン酸化酵素(MAO) 局在について検討する際の免疫組織学的手法に困難性が考えられたが、思いのほか順調に手技が確立され、その局在についてクリアな結果が得られた。また、その局在性からセロトニンの代謝機構の一部が明らかになり口腔粘膜の増殖及び分化の過程を明らかにする手がかりを得ることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
口蓋突起の基底膜、細胞膜表面、細胞外器質に局在するプロテオグリカンおよびその分解酵素であるパールカン、そしてプロテオグリカンを介して遊離、活性化されて口蓋突起の挙上、水平転移、発生、癒合、そして口蓋の骨形成、更には二次口蓋間葉細胞の分化、増殖に関与すると考えられる増殖因子bFGFとそのレセプターFGFR-1,2,3,4の局在を免疫組織化学、in situ hybridization法によって明らかにし、ヘパラナーゼを介した基底膜の消失と口蓋形成との関連を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスによる動物実験において、妊娠時期胎生10日目のマウスの数が揃わなかったため、一部の実験の開始が遅れ、試薬や解析のための消耗品の購入が次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度と今年度に計画していた動物実験を、本年度前半に行い、免疫組織学的にセロトニンなどの口蓋突起の基底膜の代謝機構を解析するために使用する試薬やその他の消耗品を購入する。また、実験補助のための人件費および本年10月に開催される日本口腔外科学会への発表のための旅費に経費を使用する予定である。
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