研究課題
厚生労働省は平成23年に法律第95号「歯科口腔保健の推進関する法律」を施行した.その中で「口腔機能の獲得,成長発育をはかるための歯科医療による介入が必要」と明記されており,平成34年までに不正咬合の減少を10%にまで減少させることが目標の1つである.これを受け,口唇閉鎖不全が不正咬合に関わる割合が高いことから,口唇閉鎖力測定器を業者と共同開発し厚生労働省の認可を受けた.この口唇閉鎖力測定器が市販されるに至り,実態調査を行ない健常児における口唇閉鎖力とその正常値を明らかにした.形態計測については顔面に関して三次元形態計測機器3dMDを用いて定量化するシステムを構築し,その成長や治療前後の変化を明らかにする手法を開発した.咀嚼運動については1.VICON,2.ナソヘキサグラフ,3.家庭用ビデオ,を必要に応じて計測し,それぞれの特徴について検討を加えた.その結果,口唇閉鎖不全を伴う過蓋咬合,反対咬合,叢生,開咬,上顎前突について,口唇閉鎖を改善するトレーニングを行うことにより,口腔機能の改善がいずれの不正咬合においても認められた.しかし,この不正咬合の中でも反対咬合,開咬は口腔習癖の除去や咬合の改善を優先し,口唇閉鎖力のトレーニングを行うことが有効であり,一方,過蓋咬合,上顎前突では先行してトレーニングを実施した場合にも効果が得られることが示唆された.本研究の成果は口腔健康を推進する基盤的な情報提供を行えたと考えられる.
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Archives of Oral Biology
巻: 92 ページ: 57-61
10.1016/j.archoralbio.2018.03.012