研究課題/領域番号 |
16K11891
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
隅田 好美 大分大学, 福祉社会科学研究科, 教授 (90377185)
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研究分担者 |
小林 正治 新潟大学, 医歯学系, 教授 (80195792)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 口腔がん / 心理社会的ニーズ / QOL / アイデンティティ / 連携 |
研究実績の概要 |
本研究では質的研究を通して、口腔がん患者のアイデンティティの崩壊・再構築のプロセスと関連要因を明確にする。特に、①告知後から手術後の心理社会的ニーズの変化および生活上の問題点とその要因 ②アイデンティティの崩壊・再構築とQOLおよび抑うつの関連 ③アイデンティティの再構築への家族の影響について明確にする。 本研究により歯科専門職と福祉専門職との連携が広がり、口腔がん患者のトータルペインへの支援を行うことで、口腔がん患者の人生が豊かになる可能性が高くなる。 本研究では2つの調査を実施する。調査1は口腔がん患者への縦断研究であり、病状告知後から心理検査とSEIQol-DWを実施することで、アイデンティティの崩壊と再構築のプロセスおよび抑うつの関連を明確にする。調査2は口腔がん患者および家族への聞き取り調査であり、患者のアイデンティティの崩壊・再構築のプロセスの関連要因を分析するとともに、家族の心理・社会的ニーズと家族への影響を明確にする。 本年度は調査2について、患者7名、家族2名に対して調査を実施した。口腔がんは一般的ながんと同様の問題点とともに特有の問題が生じていた。独自の問題では、摂食嚥下機能低下により外食が困難となり日常生活に制限が生じたり、友人との食事を避けるなど社会的関係の減少に繋がっていた。また、「食べることができる環境なのにおいしい物が食べられない悔しさ」が語られた。構音機能障害では聞き返される経験を繰り返すことが精神的苦痛となり話すことが消極的になるなど、社会的関係に影響していた。さらに、経済的な影響、仕事への影響、抗がん剤による日常生活への影響などがあった。口腔がんにより生じた問題への対処は、過去の問題に対処したストレスコーピング特性が関係していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
調査1は、病状告知後からの継続的な調査を実施する予定である。研究分担者を始め研究のフォールドである新潟大学医歯学総合研究科組織再建口腔外科学分野の歯科医師へ協力依頼を行ってきたが、研究の同意を得ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
調査1については、患者への心理的配慮を行いつつ研究協力依頼を継続する予定である。計画では聞き取り調査の担当は、研究代表者のみであった。しかし、口腔がん患者の新患から研究の同意を得られた場合、いつでも実施することができるように、新潟大学医歯学総合研究科組織再建口腔外科学分野の歯科医師も聞き取り調査を実施することができるように、聞き取り調査等の技法を習得してもらった。平成29年度は研究協力者を確保できるように努力する。 調査2については、対象者数を増やしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会で報告するための旅費としていたが、調査1の研究協力者(口腔がん告知直後の患者)を得られなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に学会で報告するための旅費とする。
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