本研究の目的は、病気で妻を亡くした中年期男性と研究者が協働し、死別前から現在に至るまでの家族の歴史に焦点を当てた体験の語りの中で共に家族の強みを探索し、家族の強みの全体像を明らかにすることであった。最終年度はさらに追加して研究協力者の語りをきかせていただいた。研究協力者の方々は、仕事では指導的立場にあり、管理や運営に携わる人もいた。妻は入退院を繰り返していたが、妻の病状に合わせて、家事仕事は家族や親類で助け合っていた。妻の介護が必要になれば、研究協力者は仕事の調整をして介護に携わり、在宅緩和ケアチームの協力を得ている人もいた。妻と死別をしてから1年以上の歳月があり、その間、子どもが入院することがあったり、子どもは独立して家を離れたり、新しく同居家族ができたり、長年飼っていた家族同様の動物が亡くなったり、一人暮らしをしていたりと、妻との死別時から家族の状況が変化し、その変化に対応していた。研究協力者は自身を含めて家族の体験を語ってくださり、中には改めて家族メンバーに家族についての思いを問いかけ、その話をしてくださる人もいた。生前だけではなく亡くなった後の妻の存在も含めての家族を話してくださった。その語りをKJ法の手法に基づき、一人ひとり探検ネットに家族の強みとして表した。家族の強みは多岐にわたるが、まず、妻を含めて「家族を守る」という役割における強みが見いだされた。「妻と子どもの生きる希望を守ることができた」「妻の尊厳を守り続けることができた」「妻の安楽を守ることができた」である。その他、自分の人生イベントと妻との出会いや生活、看取り、そして現在と、一連の体験を紐解き、「今世の役割を知る」や「自分は大きなものに導かれている」という生きる目的に関わる強みも見出だしていた。
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