研究課題
認知症の高齢者のための新たな転倒予防策として、病棟の色彩環境に着目した。本研究は、病棟内の手すりやベッド柵に鮮やかな着色を施すことで、転倒率や転倒状況が変化するか否かを調査し、色彩を用いた転倒予防の実用化を探ることを目的としている。研究は、基礎研究として着色したベッド柵や手すりが病棟で使用可能かを探る研究Ⅰと、実際の病院で介入調査を行う研究Ⅱより構成される。【研究Ⅰ】目的:ベッド柵や手すりに前研究で「見え易い」ことが明らかになった鮮やかな着色(ピンク色/magenta)を施した前後の視線や動作の変化を明らかにする。結果:①着色したベッド柵の方か通常のベッド柵よりも、着座時の頸部屈曲角度が小さい。②着色したベッド柵の方が通常のベッド柵よりも注視回数・時間が長い。考察:①着色したベッド柵は、通常のベッド柵と比較して着座時の姿勢が屈曲しないため、高齢者の動作に好ましくない影響を与える可能性は低い。②着色したベッド柵の方が通常のベッド柵よりも視認性が高く、歩行時や生活の場で、目印として利用できる可能性がある。【研究Ⅱ】目的:認知症治療病棟の手すりに着色し、着色前後で転倒率や転倒状況が変化するか否かを検討する。研究状況:①介入は、新型コロナウイルス感染症拡大のため中断を余儀なくされた。②途中大阪北部地震などの影響も考慮して、介入期間を延長する予定であったが、それは叶わなかった。結果:①2つの認知症治療病棟でコントロール期間・介入期間それぞれ1年間のデータが収集できた。②トイレでの転倒率は低下しなかった。しかしインシデントの影響度分類により受傷状況は改善した。③病棟全体の転倒率は減少傾向がみられたが、テープ貼付場所の転倒率は低下しなかった。さらに分析中である。