研究課題/領域番号 |
16K12459
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
茅 暁陽 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (20283195)
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研究分担者 |
藤代 一成 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00181347)
豊浦 正広 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (80550780)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 顕著性マップ |
研究実績の概要 |
従来の顕著性マップは、基本的に色やテクスチャ等の視覚特徴の中心周辺差分に基づくものであるに対して、本研究では同一の点に収束する線群(リーディングライン)等の大局的構造をもつ特徴にも人間の目が無意識的に誘導されることに着目し、従来の低レベル属性の中心周辺差分による効果にリーディングラインによる効果を統合し、リーディングラインを含む画像に対する視覚注意をより正確に予測可能な新しい顕著性マップを提案する。 平成28年度まで実装したリーディングラインによる顕著マップの算出法では、まず、Vanishing Pointを推定し、Vanishing Pointにガウス分布に従う輝度マップを重ねたものを顕著性マップとした。しかし、この方法ではリーディングラインの構造に沿って注意が引き付けられている現象を正確にモデリングすることができなかった。平成29年度はVanishing Pointを明示的に検出せず、KongらVanishing Pointの検出に用いた局所テクスチャ方向による投票マップを直接利用する方法を考案した。顕著性マップの非線形性をシミュレーションするために、投票マップにDOGフィルタを施し非線形に強調したマップをリーディングラインによる顕著マップとした。さらに中心周辺差分及びセンターバイアンスとの相乗効果をシミュレーションするモデルに対しても改善を行い、既存の深層学習に基づく手法や最新の大局的構造を考慮した顕著性マップと比較して提案手法が優位であることを定量的に示すことができた。研究成果をまとめた論文がComputer Graphics International国際会議に採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では、平成29年度は実験と評価を継続的に実施し、初年度のモデルの洗練化を行うこととしていた。また、当該年度から国内外の有力会議で成果を発表することも計画に含めていた。平成29年度は可能な限り広く学習用データと評価用データを集め、評価実験を継続的に実施した。平成28年度に実装したモデルに対して、Vanishing Point検出で用いる投票マップの直接利用による精度向上及びパラメータの区間制限の導入によるモデルの精錬化に成功し、実験を通して既存手法に対する優位性を示した。また、Visual Computing分野においてもっとも歴史の古い国際会議の一つであるComputer Graphics Internationalに論文を投稿し採択されたため、概ね計画通り順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
リーディングライン効果は同一の点に収束する直線のときに得られるだけでなく、何等かの視覚要素が線状に配置したことにより形成されることもある。その場合、リーディングライン上にある画素でのテクスチャ方向は必ずしもその画素と消失点と結ぶ直線と一致しないため、局所のテクスチャ方向に基づく投票方法では有効な顕著性マップが得られない可能性がある。このような広義のリーディングライン効果を捉えるために、多重解像度において局所的vanishing pointを検出し、統合する方法を試験的に実施し、視線追跡実験による評価を通じて改善していく予定である。実現に向けて、このような広義なリーディングライン構造を有する画像を相当数収集することと、学習のための視線データの収集が急務である。なお、期待する効果が十分得られない場合は、明示的に構造特徴抽出の代わりに深層学習による方法を検討する。その場合は、十分なデータの収集が重要な課題となる。 本研究で目指す最終的な枠組みでは、モデルにさらに時間のパラメータを導入し、時間経過に伴いそれぞれの要因が顕著性モデルにどう影響するかを明らかにすることである。そのために、時間的に高いサンプリングレートを有する視線追跡装置を用いた実験を実施し、実験結果に基づき新しい時空間顕著性マップを提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の研究成果を平成30年6月に開催する2つの国際会議に投稿したため、論文発表のための国際旅費と国際会議参加費に相当する金額を平成30年度に繰り越した。また、平成30年度には非明示的なリーディングラインによる効果や時空間顕著性マップを検討するために大量の視線追跡実験を行う必要があり、実験補助者及び被験者への謝金に使用する予定である。
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