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2016 年度 実施状況報告書

マイクロサテライト不安定性を惹起する環境・遺伝要因の探索

研究課題

研究課題/領域番号 16K12605
研究機関九州大学

研究代表者

續 輝久  九州大学, 医学研究院, 教授 (40155429)

研究分担者 中津 可道  九州大学, 医学研究院, 准教授 (00207820)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2018-03-31
キーワードゲノム不安定性 / 大腸がん / ミスマッチ修復系
研究実績の概要

ヒトゲノム全体に多数散在しているマイクロサテライト配列は、多くのがん細胞で不安定化していることが報告されている。家族性大腸がんの解析からマイクロサテライト配列の不安定性(MSI)にはミスマッチ修復異常が関連していることが明らかにされたが、それ以外の要因も関わっていると考えられるデータがあるにもかかわらず、他の要因は明らかにはされていない。
平成28年度は、MSIが発生する要因を解明するために、MSIを簡便に検出する新しい実験系の構築のためにベクターの作製を行った。AcGFPのORFとmCherryのORFをD13S175のCAリピートでつなぎ、Type A MSIが生じるとAcGFP-mCherry融合タンパク質が発現するType Aベクターを作製した。また、AcGFPのORFとmCherryのORFを繋ぐスペーサー領域に、D13S175のCAリピートに停止コドンを挿入して作製したCAリピート・停止コドンカセットを挿入し、停止コドンがなくなるようなType B MSIが生じるとAcGFP-mCherry融合タンパク質が発現でき、Type A MSIが生じた場合はAcGFPが発現してもmCherryは発現しないType Bベクターの作製を行っている。
MSIはDNAポリメラーゼの複製エラーで生じたマイクロサテライト配列内での欠失・挿入がミスマッチ修復系の欠損により修復されないで残り、次の複製でリピート数の変化が固定されて生じるとされている。そこで、校正機能を失ったDNAポリメラーゼを持つ細胞を作製して複製エラーを亢進させ、Type A MSIとType B MSIの発生頻度を検討するために、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集により3'-5'エキソヌクレアーゼ・ドメインにアミノ酸置換変異を導入したHeLa細胞を作製した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

蛍光タンパク質の種類は変えたが、当初の計画通りMSIを簡便に検出する新しい実験系の構築のためにベクターの作製を行った。Type A MSIが生じるとAcGFP-mCherry融合タンパク質が発現するType Aベクターを作製し、HeLaMSH2欠損細胞を用いて有用性の確認を行っている。また、AcGFPのORFとmCherryのORFをつなぐスペーサー領域に、CAリピート・停止コドンカセットを挿入し、Type B MSIが生じるとAcGFP-mCherry融合タンパク質の発現が期待できるType Bベクターの作製を進めている。
MSIはDNAポリメラーゼの複製エラーで生じたマイクロサテライト配列内での欠失・挿入がミスマッチ修復系の欠損により修復されないで残り、次の複製でリピート数の変化が固定されて生じるとされている。MSH2完全欠損細胞だけでなく、MSIが診断基準となっているリンチ症候群で認められている変異を導入したヒト細胞株を樹立し、解析を進めている。さらに、複製エラーの亢進とType A、Type B MSIの発生との関連を検討するために、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集によりDNAポリメラーゼδの3'-5'エキソヌクレアーゼ・ドメインにアミノ酸置換変異を導入したHeLa細胞を作製している。

今後の研究の推進方策

当初の計画通り、
(1)新規検出系を導入した細胞株を樹立し、安定性に関しての検討を行う。
(2)新規検出系を導入した細胞を化学物質などで処理してMSIを誘導するものの検索を行う。
(3)siRNAライブラリーを用いて、その欠損がMSIを誘導する遺伝子の網羅的検索を行う。

次年度使用額が生じた理由

物品費に関しては、研究室でストックしていた消耗品を使用することで、年度内での購入分の節約ができた。また、旅費に関しては、他の資金で学術集会での発表ができたので、当初予算のほぼ半額ですんだ。

次年度使用額の使用計画

繰越した59万円を人件費・謝金として活用し、変異解析を担当する研究補助員を雇用して集中して効率的に解析を進める予定。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Celecoxib and 2,5-dimethylcelecoxib inhibit intestinal cancer growth by suppressing the Wnt/β-catenin signaling pathway2017

    • 著者名/発表者名
      Egashira, I., Takahashi-Yanaga, F., Nishida, R., Arioka, M., Igawa, K., Tomooka, K., Nakatsu, Y., Tsuzuki, T., Nakabeppu, Y., Kitazono, T., Sasaguri, T.
    • 雑誌名

      Cancer Sci.

      巻: 108 ページ: 108-115

    • DOI

      10.1111/cas.13106

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] BUBR1 insufficiency in mice increases their sensitivity to oxidative stress2016

    • 著者名/発表者名
      Matsuda, D., Matsumoto, T., Honma, K., Ikawa-Yoshida, A., Onimaru, M., Furuyama, T., Nakatsu, Y., Tsuzuki, T., Maehara, Y.
    • 雑誌名

      in vivo

      巻: 30 ページ: 769-776

    • DOI

      10.21873/invivo.10993

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] BubR1 insufficiency impairs liver regeneration in aged mice after hepatectomy through intercalated disc abnormality2016

    • 著者名/発表者名
      Ikawa-Yoshida, A., Matsumoto, T., Okano, S., Aoyagi, Y., Matsubara, Y., Nakatsu, Y., Tsuzuki, T., Ohkusa, T., Nomura, M., Onimaru, M., Furuyama, T., Maehara, Y.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 6 ページ: 32399

    • DOI

      10.1038/srep32399

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Nucleotide excision repair of oxidised genomic DNA is not a source of urinary 8-oxo-7,8-dihydro-2'-deoxyguanosine2016

    • 著者名/発表者名
      Evans, M. D., Misty, V., Singh, R., Gackowski, D., Rozalski, R., Siomek, A., Phillips, D. H., Zuo, J., Mullenders, L., Pines, A., Nakabeppu, Y., Sakumi, K., Sekiguchi, M., Tsuzuki, T., Bignami, M., Farmer, P. B., Olinski, R., Cooke, M. S.
    • 雑誌名

      Free Radic. Biol. Med.

      巻: 99 ページ: 385-391

    • DOI

      10.1016/j.freeradbiomed.2016.08.018

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Mutyh欠損マウスにおける酸化ストレスによる消化管腫瘍発生頻度上昇と特異的体細胞変異シグニチャーの解析2016

    • 著者名/発表者名
      鷹野典子、大野みずき、中津可道、中別府雄作、續輝久
    • 学会等名
      日本分子生物学会第39回年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-12-02
  • [学会発表] ヒト細胞由来ミスマッチ修復遺伝子変異体の作製とその解析2016

    • 著者名/発表者名
      林田元気、中津可道、日高京子、藤兼亮輔、日高真純、釣本敏樹、續輝久
    • 学会等名
      日本分子生物学会第39回年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-12-02
  • [学会発表] CRISPR/Cas9 を用いたDNAポリメラーゼδ R506H突然変異のMSH2-null HeLa MR 細胞への導入2016

    • 著者名/発表者名
      宋頴霞、日高京子、中津可道、織田信弥、林田元気、藤兼亮輔、日高真純、續輝久
    • 学会等名
      日本分子生物学会第39回年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-12-02
  • [学会発表] ミスマッチ修復欠損マウスを用いた新規生殖細胞変異の検出2016

    • 著者名/発表者名
      大野みずき、鷹野典子、佐々木史子、中津可道、續輝久
    • 学会等名
      日本環境変異原学会第45回大会
    • 発表場所
      つくば国際会議場
    • 年月日
      2016-11-17
  • [学会発表] Development of assay systems to characterize the variants of mismatch repair factor MSH2 found in Lynch syndrome2016

    • 著者名/発表者名
      Hayashida, G., Nakatsu, Y., Hidaka, K., Fujikane, R., Hidaka, M., Tsurimoto, T., Tsuzuki, T.
    • 学会等名
      The 10th International 3R (Replication, Recombination and Repair) Symposium
    • 発表場所
      松江
    • 年月日
      2016-11-14
    • 国際学会
  • [学会発表] 酸化ストレスによる消化管腫瘍発生頻度上昇と特異的体細胞変異シグニチャー: Mutyh欠損マウスを用いた解析2016

    • 著者名/発表者名
      大野みずき、鷹野典子、中津可道、中別府雄作、續輝久
    • 学会等名
      第75回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-10-07
  • [学会発表] ヒト細胞を用いたミスマッチ修復因子MSH2の変異体の解析2016

    • 著者名/発表者名
      林田元気、中津可道、日高京子、藤兼亮輔、日高真純、續輝久
    • 学会等名
      第75回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-10-07
  • [学会発表] Characterization of mismatch repair factor MSH2 variants found in Lynch syndrome2016

    • 著者名/発表者名
      林田元気、中津可道、日高京子、藤兼亮輔、日高真純、釣本敏樹、續輝久
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第59回大会
    • 発表場所
      広島
    • 年月日
      2016-10-07
  • [学会発表] CRISPR/Cas9を用いたヒト細胞のミスマッチ修復因子への変異導入2016

    • 著者名/発表者名
      林田元気、中津可道、日高京子、 藤兼亮輔、日高真純、釣本敏樹、 續輝久
    • 学会等名
      日本遺伝学会第88回大会
    • 発表場所
      三島
    • 年月日
      2016-09-09
  • [学会発表] ミスマッチDNA修復系が体細胞および生殖細胞ゲノムにおよぼす影響2016

    • 著者名/発表者名
      鷹野典子、大野みずき、 佐々木史子、中津可道、續輝久
    • 学会等名
      日本遺伝学会第88回大会
    • 発表場所
      三島
    • 年月日
      2016-09-09
  • [図書] Thresholds of Genotoxic Carcinogens: From Mechanisms to Regulation Chapter 4: Possible mechanisms underlining genotoxic thresholds: DNA repair and translesion DNA synthesis2016

    • 著者名/発表者名
      Nohmi, T., Tsuzuki, T.
    • 総ページ数
      210(分担:pp. 49-66)
    • 出版者
      Academic Press

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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