研究実績の概要 |
本研究課題では、主として次の条件でレプリカ標本製作実験を行った。原型試料:イチョウGinkgo biloba L., 1771またはカンヒザクラCerasus campanulata (Maxim.) Masam. & S.Suzuki の葉,成形金属板:厚さ0.1, 0.2, 0.3mmの銅またはアルミニウム、比較用に他14種類(チタン、バナジウム、クロム、鉄、ニッケル、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、パラジウム、銀、白金、金、鉛:厚さ0.1mm),衝撃波圧力123MPa(導爆線と試料との距離80mm、水中衝撃波) 目視評価で0.3mm厚さは銅・アルミニウムいずれでも標本とするには転写性が低かった。0.2mm厚さでは葉脈等の構造が十分に転写され、走査型電子顕微鏡観察においても細胞壁や気孔等の表面構造が確認された。0.1mm厚さでは目視でも鮮やかな転写が確認された。標本への活用には0.1mmまたは0.2mm厚さの銅板またやアルミニウム板を用い、標本の歪みを防ぐためにホルダーを使用することで標本として活用できると判断される。 人間の指の2点識別距離は3~ 5mm 程度の触覚分解能 (Nakada, M. J. Hand Therapy, 6, 23-28, 1993) であることから、植物葉を可触レプリカ標本とする場合、要求される転写性は葉脈の構造を識別できることが主な条件と考えられ、当該条件を満たす標本を制作することができた。 今後は標本としての活用上、茎や根などの植物の全体像を触覚により確認することができるレプリカ標本を作るために、標本の大型化を検討する必要がある。
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