本研究は、近代中国随一の国際都市であった上海を地盤に、1910年代後半から相継いで展開された旅行活動のうち特に民間組織によるものに注目し、「友声旅行団」及び「倹徳儲蓄会」旅行部の活動を対象事例として、メディア社会文化史の視点からその実相にアプローチした実証的基礎研究である。「倹約」と「倫理道徳(禁欲)」を標榜する社会改革への意識と集団旅行活動、そして移動mobilityと想像の読者共同体形成との関係性の解明を通じて、近代中国における近代性modernity創出の内在的聯関に迫り、従来の中国近代旅行草創期の歴史叙述の定説を大きく覆す成果をあげた。
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