バナトブルガリア語は1950年代にルーマニア側では調査が行われたが、セルビア側では調査がほとんど行われてこなかった。そのため同一方言に属すると指摘されてきたものの、その違いや言語的実態については不明であった。またルーマニア側でも社会主義体制が終わるなど社会言語状況に変化が起こったことを考慮に入れ、両国にまたがる地域で話される言語の実質的な違いとそれを生み出すメカニズムを明らかにした。加えて、バナトブルガリア語は消滅危機言語であり、その記述や分析は焦眉の問題であったため、本研究の成果は現地社会への貢献も含んでいると言える。
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