研究課題
本研究では、日英バイリンガルを対象に、メタ言語能力発達に関して、日本語モノリンガルと比較するのに、認知的葛藤タスク遂行時にFp1(前額部左脳)とFp2(同右脳)での脳賦活様態データも同時に収集した。日英バイリンガル幼稚園在園の日英バイリンガル2―6歳児に加えて、統制群として国内在住の日本語モノリンガル2―6歳児の104名からデータ収集を行った。年齢・識字率・バイリンガル園在園期間によるバイリンガル度を勘案して、モノリンガルとバイリンガルを年齢別に厳格に抽出して分析を行った。incongruent条件下での認知的葛藤タスク遂行時の行動データに関しては、2歳時にモノリンガルが優り、3歳以降6歳時までバイリンガル・モノリンガル間に差がないことが判明した。ただし、これら2タスク遂行時における脳賦活様態を精査したところ、左脳ではバイリンガルの優位性が4歳位までは顕著であった(右脳では5歳時のみ)。つまり認知的葛藤タスク遂行時のバイリンガル児の優位性は、言語間距離の遠い日英バイリンガル対象実験においても、4歳までのFp1と5歳時のFp2に見いだせた。これはBialystok et al. (2004)のバイリンガル優位説を支持するものであるが、一方でモノリンガルの優位性を示すPalmer (1972)やモノリンガル・バイリンガル間に差はないとするHilchey & Klein (2011)も支持する結果となった。今後の方針は、モノリンガルとバイリンガルを厳格な基準でマッチングすると、104名の園児からのデータが僅か18名にまで絞られてしまった今回の経験を生かして、比較対照できる被験者母数を増やすことが第一である。また、本研究を通して、僅か数人であるが2歳時より縦断的に5歳時までデータ収集を行えたので、個人差の激しいこの年齢層の貴重なデータとして横断データと比較検討したい。
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立命館言語文化研究
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JALT Mind, Brain, and Education SIGThe MindBrainEd Journal
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