本科研ではPioneerが開発したアプリGlobal Sounds(GS)を用いて以下の研究と教育実践を行った。 1 海外日本語音声景観(Voicescape)の収集:海外の日本語音声景観を収集し、アプリへのプロットを行った。プロットしたのは主に南米、中国、東南アジアである。プロットした結果、世界中のどこで日本語の音声景観が存在するか可視化することに成功した。特に南米地域の音声景観を保存できたことは資料性が高いと考える。しかし、自由発話の音声は移動するため、たまたまそこにいただけであるわけではないことを確定するための保証が必要である。そのため、定期的なイベント、お店で流れる音声などに固定することが求められる。また、「GPS情報を取得できない」状況が頻発した。アプリの問題と考えられるため、場所に紐づけるのであれば、Global Soundsではなく位置情報が確実に入るInstagramなどのSNSを利用することが適切と考えられる。 2 WEBインターフェイスの構築:Global Sounds内に投稿されている日本国内のサウンドスケープを100ほど日本語学習者と選定し、プロットを行い、インターフェースを作成した、音声景観と画像、解説が提示され、日本事情の学習素材として優れたものとなった。これらのリソースをどのように授業実践に応用するかが今後の課題である。 3 日本語教育への応用:北米の大学の学生たちが日本で集中的に日本語を勉強するプログラムにおいて、このアプリを使って日本の公共音声収集を行った。その結果、学生たちの日本のコミュニティへの関心が高まった。GSは音声教育への応用可能性も考えられる。例えば、GSを使った音声ポートフォリオの作成、日本語クラスの音声アーカイブの作成などである。
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