中国甘粛省の敦煌石窟を中心に,中央アジア東部地域の仏教石窟遺跡に遺存する壁画の美術史的検討と,石窟に残された古ウイグル語題記銘文の文献学的解読に基づいて,主に西暦7ー10世紀頃の仏教壁画に表現される種々の仏教的思想が,後世(10ー14世紀)のトルコ系ウイグル族により如何に受容され「トレンド」化したか,という問題の解明を試みた。 研究期間中,敦煌石窟の古ウイグル語題記銘文の資料集を刊行し,これに基づきウイグル仏教徒の活動の実態を分析し,一定の成果を得た。ただし,現地調査上の制限から,ウイグル仏教に特徴的な「トレンド」の解明については十分に実証するためのデータを収集できず,今後の検討課題とした。
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