本研究の目的は、陸奥国府多賀城跡への貞観津波の襲来を検証するため、現生の海生種・汽水種珪藻の遡上限界を確認することにある。珪藻研究者と5月8日大潮日、7月14日若潮日に砂押川河口から多賀城跡近辺まで16地点で試料水を採取し、珪藻分析を行った。その結果、①海生種珪藻の遡上限界は河口から4 kmで、河口から6 km上流でも検出された多賀城跡城外のイベント堆積物は津波に由来する可能性が高いこと、②海水遡上と海生種珪藻の輸送は一致し、海生種珪藻の存在は海水遡上の指標となりうるが、汽水種珪藻は生育範囲が広く遡上限界の推定や指標には不向きであること、③河口から2 kmが海生種珪藻の生育限界と判明した。
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