研究課題/領域番号 |
16K13361
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大槻 恒裕 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (40397633)
|
研究分担者 |
新開 潤一 札幌学院大学, 経済学部, 講師 (10571648)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 経済政策 |
研究実績の概要 |
東アジア新興国の近年の経済成長は、輸出主導型成長政策(ELG)や対内海外直接投資(FDI)の効果を支持するものであるが、そうした対外経済開放戦略が地場企業の生産性や産業構造の先進国化(高度化)を通じて経済成長を牽引する過程については十分に解明されていない。とりわけ、外国技術の吸収に依存する中所得国がやがて技術力の壁にぶつかり経済成長が停滞する、「中進国の罠」への学術的関心が高まっている。本研究では、ミクロ、マクロの両レベルでELG やFDI が先進技術の導入及び産業構造の高度化、とりわけ輸出面での産業構造高度化を促進したのか、また、この輸出高度化が経済成長を誘発したのか、さらに、このような傾向が短期的か長期的かを先端的な計量分析を駆使し、包括的・多面的に検証する。平成28年度においては、2つのユニット(マクロレベル分析、ミクロレベル分析)それぞれでデータ収集、先行研究サーベイ、分析手法の吟味を行った。マクロレベル分析ユニットでは、国際連合統計局のComtradeデータを用いて、輸出高度化指数を構築し、1人あたり所得、対内FDI などを軸としたパネルVAR 分析、及びインパルス反応関数分析を行った。サブサンプル分析により、中進国の罠の存在を示す結果を得た。この研究は初稿段階として完成した。また、ミクロレベル分析ユニットでは、ベトナム統計局からベトナム企業の財務データを入手し、各企業のTFP(全要素生産性)を推計し、それと、FDIの垂直スピルオーバー効果を検証した。本論文は推敲を数回行い現在Journal of Asian Economicsに投稿を行った。その他関連分野の研究として、企業の輸出実績に影響する要因の分析も行い英文著書の章として刊行した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度においては、研究の準備段階として必要なデータ構築と先行研究サーベイを中心に行った。2つのユニット(マクロレベル分析、ミクロレベル分析)それぞれでデータの収集及び構築、及び先行研究のサーベイをもとに分析手法の吟味、データの初期分析を行った。1本は初稿段階、もう1本は推敲を数回行い現在Journal of Asian Economicsに投稿し査読中である。研究分担者との間でも、研究手法やデータの活用法について意見交換を計3回行った。その他関連分野の研究としては、FDIが途上国企業の輸出実績に影響する要因の分析も行いPalgrave Macmillan出版英文著書内の2つ章として刊行予定である。以上より、本件課題はおおむね順調に進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、Journal of Asian Economicsで査読中の論文のリバイズを行い5月に再投稿の予定である。輸出高度化の論文は、分析の見直しを6月までに完了し、7月に査読付き国際学術誌への投稿を目指す。また、この論文のスピンオフとして、産業構造を反映したFDI指標を10月までに構築し、より詳細なFDIのスピルオーバー効果をマクロレベルでVARモデルにて検証する予定である。さらに、12月までに輸出構造の高度化指標についても、輸入構造を考慮した高度化指標も構築し、これらの間の詳細な影響や、経済成長やスピルオーバー効果を通じた効果をそれぞれ構造的に推計することを目指す。Palgrave Macmillan出版の章として刊行した2本の論文は査読付き国際学術誌に投稿すべく改良し、9月での投稿を目指す。研究会等の開催については、5月には貿易と技術的輸入規制に関する大規模な国際シンポジウムを東京で開催する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していたインドネシア・バンドンでの学会報告が、論文不受理により出席を断念し、 そのため海外出張旅費の支出がなくなったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
5月に研究代表者が主催する国際シンポジウムで米国・英国の研究者計2名を本研究費で招聘することになり招聘旅費が必要となるが、28年度からの繰越額を利用することにより当初計画に影響することなく招聘を実現できる。
|