(1)宿泊する学生(学習者・ゲスト)、(2)ホストファミリー、(3)教育機関および(4)地域社会といったステークホルダーのうち、特に前三者に対してホームステイのもたらすインパクトを明らかにする研究に取り組んだ。ホームステイの効果についての研究は「送り出し」に調査分析が集中しがちで、受入れサイドではソーシャルスキル獲得が注目されてきた程度である。 本研究では従来の教育効果研究を緻密化するとともに「学習がはかどる」留学生宿舎のオプションとして、俯瞰的に日本型のホームステイ運営モデルの構築とガイドラインの設定を目指した。研究期間中には全国の大学に呼びかけ、留学生宿舎に関するアンケートを実施し、63校から回答を得た。また大阪大学の短期夏季プログラムに参加した米国などの49名の学生を対象として、ホームステイ学生とそれ以外の宿舎の学生との間で、成績の差が出るのかと行った実証的な調査を試み、その成果については日本学生支援機構の「ウェブマガジン留学交流」で広く関係者に周知した。平成29年度、平成30年度にも同様の調査を継続すると共に、最終年度は夏季にアメリカの学会(NAFSA)での発表を行って、海外の研究者や留学実務担当者との意見交換を行った。 ホームステイを実施している学校を対象としたアンケート結果では、宿舎が逼迫しているからとか、ホームステイは初期開発投資が低廉、と言う捉え方は少数であり、運営コストに悩みつつも、高い教育効果を期待をしつつホームステイ運営をしている実態が明らかになった。 サマープログラムの参加者アンケートの結果からは、宿舎による成績(日本語習得の結果)の顕著な差は見られず、数ある成績決定要因の一つにすぎないことが明らかになった。ただし「日本人の生活を知りたい」学生がホームステイを選択していることが示され、スムーズな文化理解に重点を置く運営のガイドライン化が望まれる。
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