研究課題/領域番号 |
16K13570
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
藤井 斉亮 東京学芸大学, 教育学部, 名誉教授 (60199289)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 授業研究 / 研究授業 / 板書 / 授業評価 |
研究実績の概要 |
授業の分析と評価は、逐語記録を作成するなど多大な時間と労力を要する。もっと簡便でかつ有効な評価方法はないか、というのが本研究の動機である。TIMSSビデオスタディ以来、算数数学授業の国際比較研究が行われ種々の知見が得られてきた。その中で、わが国の算数数学の授業では、板書を消さない傾向が顕著であることが判明している。 本研究の目的は、この特徴を授業評価に活用することである。具体的には、1時間の授業の全体像が残っている板書について、学習者と指導者による評価から授業評価を行う。この簡便であるが、学習者と指導者の授業観を統合する評価により、わが国の算数科授業の特質を顕在化でき、その価値を国際的に発信できると期待できる。 本年度は、昨年度から引き続き東京都内および近郊各県で開催された研究授業に焦点をあて、学習者と指導者に、研究授業直後に「今日の授業で重要な箇所はどこか」を指し示してもらい、その一致度と理由から授業評価を行ってきた。データを整理した結果、授業者には授業の最終段階で記述する「まとめ」を重視する傾向が見出され、特に習熟度別授業ではその傾向が顕著であることが判明した。しかし、児童のデータからはまだ傾向が顕在化されていない。昨年と同様、「まとめ」が重要とする児童が一定数みいだせるが、その一方で授業の導入場面を重要とする児童や、「練り上げ」場面が重要と指摘する児童もおり、まだ、パターンは顕在化されていない。 研究授業後に行われた研究協議会においては、意図的に板書について論点となる場面を設定してきたが、授業評価との関連が明確に捉えられていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、昨年度に引き続き東京都内および近郊各県で開催された研究授業に焦点をあて、学習者と指導者に、授業直後に「今日の授業で重要な箇所はどこか」を指し示してもらい、その一致度と理由から授業評価を行ってきた。データ数を増加させたものの、学習指導案通りに授業が終了せず、板書が未完成である場合があり、データ数の確保が困難であり、それが(3)とした主な理由である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度に引き続き東京都内および近郊各県で開催された研究授業に焦点をあて、学習者と指導者に、授業直後に「今日の授業で重要な箇所はどこか」を指し示してもらい、その一致度と理由から授業評価を行う。その際、データ数の確保が困難であったこれまでの状況を踏まえ、次年度は、特定の学校に焦点をあて、継続的にデータを収集し、各教師の変容に焦点をあて質的分析も試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ収集先を東京都内および近郊各県、さらには海外で実施された研究授業としてきたが、量的に不十分であり、分析に関わる経費が十分に消費できていない。 そこで次年度は、量的分析だけでなく、特定の学校に焦点をしぼり、そこでの変容に着目するなど、質的分析も試みるために分析補助謝金、調査旅費などに使用する予定である。
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