中性子イメージングは物質内部を非破壊で観察できる優れた技術であるが、現状の中性子イメージングでは空間分解能が低く、地球外物質の研究に応用できない。そこで本研究では、高分解能を実現する新たなコリメータを開発する。まず2枚のGd板に250μmのスリットを100本切り、垂直にずらして重ねたコリメータを作る。このコリメータを2つ重ねることで分解能可変マルチアレイコリメータを構成する。初年度は使用するガドリニウム板の調達と加工方法の検討を行った。ガドリニウム板を加工する技術は未だ確立されていないためである。まず放電ワイヤー加工技術の検討を行った。その結果、200μm未満の幅でワイヤー加工ができる加工条件を割り出したが、目的とする加工を全て達成するために必要な時間とコストが膨大となってしまう問題が残った。一方で、より理想的な高速細穴放電加工の実験を行った。ステンレス鋼と同じ加工条件では穴が開かなかったため極間コンデンサを用いることでこの問題を解決したが、現在の加工条件では穴にテーパーが付いてしまうこと、電極がある確率で折れてしまう問題などが判明した。しかし条件を工夫した結果、細穴放電加工によってガドリウム金属板に等間隔で穴を開ける技術を開発した。次にガドリニウム板を2枚重ねて固定し、開発した技術を用いて62個の穴を開けることに成功した。次にこの2枚のガドリニウム板を完璧に並行に設置するための架台を金型製作技術を金型製作技術用いて製作した。これにより全く光学調整なしにコリメータを使用できる。製作したコリメータに対しては精密な測定を行い、ミクロン単位で歪みがないことを確認した。次にこのコリメータに光を通した実験を行い、光が通っていることを確認した。現在中性子を用いた実験をJ-PARCにて準備している。
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