研究課題/領域番号 |
16K13748
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
木村 俊一 広島大学, 理学研究科, 教授 (10284150)
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研究分担者 |
島田 伊知朗 広島大学, 理学研究科, 教授 (10235616)
石井 亮 広島大学, 理学研究科, 教授 (10252420)
高橋 宣能 広島大学, 理学研究科, 准教授 (60301298)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Bloch 予想 / 代数曲面 / 有理同値の変形 |
研究実績の概要 |
Mao Sheng 教授が指導する大学院生、Mingwei Zhang氏を2016年4月から7月まで広島大学に招聘し、Mao Sheng教授ともメールを通じて3人で、代数曲面の0次元Chow群に関するBloch 予想について共同研究を行った。0次元のChow群がZと同型になる代数閉体上の代数曲面Xでは、任意の2点が有理同値となるが、有理同値は具体的にX上の代数曲線C_iとその上の有理関数f_iにより、因子の和 div(f_1)+div(f_2)+…+div(f_m)という形であらわされて、これを有理同値のデータとよぶことにする。有理同値のデータの「大きさ」を、代数曲線の本数m, 代数曲線C_iの算術種数の最大値p, そして有理関数 f_iの次数の最大値dの組(m, p, d)によって測ることにする。このとき、Xを固定すれば、三つ組 (m, p, d) は有界であることを証明した。さらにその応用として、代数曲面の変形においてgeneral fiberの0次元Chow群がZであれば(あるいは表現可能であれば)、special fiber の0次元Chow群もZである(あるいは表現可能である)ことが示される。この成果はAsian Journal of Mathematics に投稿中である。 また、関連する研究として、無限小モチビックChow級数の特別な場合について有理性を証明した。この成果については、メキシコのオアハカで開かれた第1回代数幾何コングレスで発表した。 また、中国首都師範大学のXiaochun Rong 教授らとも共同研究を行うべくRong 教授を3月に広島大学で行われた研究集会「熊本岡山北京広島代数解析幾何シンポジウム」へ招聘し、今後の共同研究の進め方について研究連絡を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
0次元の代数的サイクルの有理同値について、その同値を幾何的データであらわし、さらにその幾何的データが「有界」であるとはどういうことか定式化に成功し、その上で代数曲面の場合に、任意の2点が有理同値となる場合には有界な幾何的データで全ての有理同値が書き表されることを証明した。これは1年目の目標の主要部分を達成したことになり、ほぼ予定通りである。 またこの研究に関連して、無限小モチビックChow級数の有理性への応用も見つけたので、これは元の予定にはない成果である。 一方、普遍的なRational Equivalence の族を見つけること、Enriques Surface の場合に具体的に調べること、という目標は平成29年度へ持ち越しとなった。普遍的なRational Equivalence については存在しない可能性も出てきたので、当初の研究計画の修正が必要かもしれない。一方、今回確かめた幾何データの有界性から、高々有限個のRational Equivalence の族で十分であることは示せそうである。変形によるBloch 予想へのアプローチとしてはそれで十分なはずであり、今後の研究計画の修正は必要ないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度にやり残した普遍的Rational Equivalence を見つける問題、Enriques Surface の場合に具体的に有理同値を構成する問題を進める。また、Mumford のFake Projective Plane をDVR上の変形族のGeneral Fiber とする変形を構成し(共同研究者のSheng Mao 教授から、すでに構成したとの連絡がある)、その場合に有界性の理論を適用すると何が得られるかを詳細に調べる。その計画を進めるため、中国科学技術大学と広島大学で共同して研究集会やサマースクールなどを開く。 平成28年度に、ラトガース大学及び中国首都師範大学のXiaochun Rong 教授を広島大学へ招聘して Gromov-Hausdorf Convergence in Metric Riemannian Geometry について講演をしていただいた。本研究では代数幾何的変形のみから出発したが、そもそもSheng Mao 教授はP進解析的な変形を念頭においており、またまず代数幾何的変形で有界性を示した上で解析的、あるいは微分幾何的な議論に移行するとどうなるかも調べたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
首都師範大学の研究者を招聘する予定であったが、ビザの関係で直前にキャンセルとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度にこちらから首都師範大学を訪れて共同研究を行う。
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