研究課題/領域番号 |
16K13761
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
辻本 諭 京都大学, 情報学研究科, 准教授 (60287977)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | オートマトン / ソリトン / 直交多項式 |
研究実績の概要 |
計算機の基礎モデルであるオートマトンが文字集合上に作用する場合,オートマトンの各状態に応じて基本関係式が得られ,オートマトン群あるいはオートマトン半群が自然に定まることになる.これにより,文字集合上の力学系やケーリーグラフ上のランダムウォーク作用素が誘導されることとなる.本研究では,これまでオートマトン群とは独自の発展を遂げてきた可積分系における箱と玉のみからなる系(箱玉系)とオートマトンとの関係性を見いだすことで,オートマトンとその極限操作などを通じて直接関連するシステムに対して,より幅広い観点からの解析を深めていくものである.特に情報学で発展した理論の上に,代数学や組合せ論を用いることで,可積分なオートマトン系に対する新しい特徴付けを見いだしてきた. また,箱玉系と1次元単純ランダムウォーク(SRW)との関係性を基に,可積分系と確率論の両分野の観点から解析をすすめることが可能となってきた.これにより,箱玉系の初期文字列をSRWとみなす解釈をあたえ,SRWからブラウン運動への極限をかんがえることで,「実数直線上の箱玉系」と呼ぶべき系が得られる.また,箱玉系の無限回の時間発展が可能な,両側無限格子かつ無限個の玉が配置された初期列の特徴づけも与えることや,箱玉系の時間発展で不変な測度などに関しても議論が可能である.本研究課題の中で見出された新しい観点は,これまでの成果で得られたオートマトンに適用することもでき,現在解析を進めているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年までに見いだした可積分なオートマトンに対する研究を発展させることで,従来では困難であった系に対してもソリトン性の証明が可能となったことが主な理由である.また,新しい方向性として,箱玉系と確率論の1次元単純ランダムウォーク(SRW)との関係性を見いだすことができ,可積分系および確率論の両分野の観点から解析をすすめることが可能となってきたことは予想外の進展であった.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までの推進方策については引き続き継続していく. オートマトンのクラスを定める状態集合や文字集合を与えることで,このクラスに属する全てのオートマトンに対して、(1)粒子数保存や時間反転可能などの力学系としての性質,(2)オートマトン図形のグラフ理論による特徴付け,(3)可積分系および特殊関数の立場から見出された新しい可積分な箱玉系との関係性など、代数学や組合せ論の観点から解析することでより体系的な理論構築を目指す. また,これまでの方策に加え,新たにオートマトンの初期文字列のランダムネスを確率論的な解釈をあたえることで,両側無限格子かつ無限個の玉を初期列に与えた場合の箱玉系についても解析もすすめていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 残額が少額であり,次年度交付額と合算することでより適切な支出が可能となるため. (使用計画) 近郊都市への研究打ち合わせの交通費として使用することを計画している.
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