研究課題/領域番号 |
16K13822
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
金崎 順一 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80204535)
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研究分担者 |
木曽田 賢治 和歌山大学, 教育学部, 教授 (90243188)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ラマン散乱分光 / 時空間分解測定 / トンネル顕微鏡 / グラファイト / ナノ構造 / 光誘起構造相転移 |
研究実績の概要 |
本研究で用いる局所ラマン散乱分光システムでは、3軸駆動機構により光ファイバーケーブルをトンネル顕微鏡ステージ上に接近させ、ファイバーを通して超高真空排気システムの外に散乱光を導くよう設計されていた。しかしながら、ファイバー径や試料-ファイバー先端間距離との関係より、散乱光を効率的に集光することができなかった。そこで、新たに3軸駆動機構により両面レンズをトンネル顕微鏡ステージ近傍に接近させて散乱光を集光する機構を製作した。その結果、ファイバーに比べて格段の効率で散乱光を集光する事が可能となった。新たに製作した集光光学系を用いて、レーザー光を照射していないグラファイト試料を用いて通常のラマン散乱分光測定を行い、炭素原子の六角格子内振動由来のGバンドが検出できることを確認した。 次に、トンネル探針を接近させることにより期待されるラマン散乱の増強効果や局所分光の条件設定を確認した。この段階において大阪北部地震に被災し、トンネル顕微鏡システムを搭載している光学除振台空気ばね式除振脚のレベル調整器及び入射及び集光光学系における光学素子の一部が破損するとともに、実験室内のレーザー光発生装置・トンネル顕微鏡・ラマン分光装置の配置が大きくずれた。破損部品の修理・各装置の再設置と調整・光学系の再構築等を行い、測定システムを震災前の状態まで回復させた。しかしながら、これにより計画に大きな遅延が発生した。 更に、代表者が他大学へ異動する事となり、H31年年初より研究設備の移設作業を開始し、新しい研究機関への実験装置の移設を完了した。現状研究設備の設置が終了し、研究の再開に向けて実験室の整備と実験装置の調整を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
H30年6月に発生した大阪北部における直下型地震において、実験装置の配置が大きくずれた他、各種部品の破損等甚大な被害を受けた。この為、破損した部品の修理・実験装置の調整及び動作確認を再度おこなう必要が生じ、研究設備を原状復帰させるまでに2カ月以上の時間を要した。更に、代表者が大阪大学から大阪市立大学へ異動する事に伴い、H31年年初より研究設備移設の準備作業により、年度後半には研究を進めることができなかった。現在、新しい研究機関において実験室の整備、装置の配置・調整を進めているが、研究の再開には至っていない。上記の理由により、研究計画に大幅な後れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
現勤務機関に移設した研究設備の設置を完了し、5月中に測定を再開できるよう実験室の整備及び装置の調整を行っている。準備が整い次第、昨年度から中断している、連続光源による空間分解測定を優先して進めると共に、時間分解測定の準備を開始する。 1)グラファイト表面のナノ構造を対象とした空間分解ラマン分光測定を推進する。グラファイトにパルスレーザー光を照射し、サイズや密度を制御して新規ナノ構造相を創成し、その構造をトンネル顕微鏡により直接観察する。グラファイト構造が残る領域とナノ構造相が創成した領域上で探針の位置を変化させ、ラマン散乱における探針増強効果と空間分解能を評価する。更に、ナノ構造の局所ラマン分光測定を行い、sp3結合形成に由来する新規ピークの発現やGバンドのエネルギー位置や半値幅等のピーク形状変化を明確にする。スペクトル変化の特徴を、STMによるナノ構造の局所構造及びトンネル分光(STS)による局所状態密度分布との相関という観点より系統的に整理し、光創成新規ナノ構造の構造的・電子的物性を解明する。 2)光励起直後からの局所ラマン分光あるいは反射分光の時間分解計測を行う。初年度に動作確認したパルス列時間遅延励起用の光学系を再構築し、ポンプ光とプローブ光を遅延時間を制御して試料に入射する。励起光からの遅延時間を制御して局所ラマン分光、反射分光測定を行い、構造相転移に関与する構造動力学の解明に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究期間の延長申請が受理され、今年度も分担者との共同研究を継続する事となった。その為、未使用分については分担者が代表者研究機関で研究する際の旅費に充てる予定である。
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